「経済全体に、どれだけお金が供給されているか」を測る指標として使われるのが、「個人や企業が持っている現金と、預金取扱機関に預けられた預金の合計」だ。これを「マネーストック」と呼ぶ。

日銀が9日に発表した、6月度の速報によると、この「マネーストック」の増え方が、5カ月連続で減速している。

これは、「アベノミクス第1の矢」である「大胆な金融緩和」に、限界が来ていることを示唆している。

なぜなら、「大胆な金融緩和」がそもそも目指してきたのは、「日銀が金融機関にお金を大量に供給すれば、企業がお金を借りやすくなる。企業はお金を借りて、設備投資を増やせば、景気も良くなる」という流れだ。

しかし、「マネーストック」が減速しているということは、日銀が放出したお金が、企業や個人のところまでスムーズに流れていないということ。つまり、金融機関に供給されたほどには、民間は借りていないのだ。3月までの1年間で、20兆円がこうした形で金融機関に"滞留"しているという(10日付産経新聞)。

お金が借りられない大きな理由は、景気の見通しが立たないことだ。いくらお金が借りやすくても、成功する確信に欠けたプロジェクトにお金を投資することには、誰もが慎重になる。

総務省が発表した、勤労者家計の「実質消費」は4月に急減し、5月はさらに下落している。夏場に消費の反動減がおさまる兆しはない。同じく総務省が発表した、物価上昇率を除いた収入である「実収入」も、4月で前年同期比マイナス7.1%、5月はマイナス4.6%。春闘での賃金上昇も焼け石に水だった。個人消費が冷えて、景気が良くなる兆しがない状況では、大規模な投資にはなかなか踏み切れないだろう。

第2の矢である「財政出動」は「長期ヴィジョンに欠ける」と批判され、第3の矢である「成長戦略」は「規制緩和の踏み込みが甘い」などと指摘されている。第2、第3の矢は、景気浮揚の目玉とはなりえていない。そうした中、比較的大きな効果があると評価されてきた「第1の矢」も、とうとう折れかかっている。

自民党政権が民主党政権とはうって変わり、大胆な経済政策を次々とくり出してきたことは、評価されるべきだろう。しかしそこに限界が見え始めた今、個人や企業は、「アベノミクス」が生み出す好景気の波に乗ることを待つことは得策ではない。

そもそも、GDPはあくまで国民の生み出す付加価値の総量である。この原点に戻り、各自が日々の「価値の創造」に務めることが重要となる。そうした企業にとっては、金融緩和も追い風になるだろう。(光)

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