安倍晋三首相はこのほど、オーストラリアのキャンベラでアボット豪首相と首脳会談を行った。両首脳は経済連携協定(EPA)と防衛装備品に関わる協定に署名し、潜水艦技術に関する共同研究を行うことを確認するなど、経済・安全保障分野で関係を強化すると発表した。

また会談ではアボット首相が、日本の集団的自衛権行使を限定容認する閣議決定を支持。会談後、安倍首相はアボット政権の全閣僚と意見交換した。当初は豪国家安全保障会議(NSC)の閣僚メンバーとの会合だけの予定だったが、オーストラリア側の強い希望により全閣僚が参加した。

さらに、共同声明では、日豪関係を21世紀のための特別な戦略的パートナーシップと明記。関係をより緊密なものとする方針を示した。

地元の「オーストラリアン紙」は、安倍首相の訪豪前、「オーストラリアの戦略的かつ経済的利益に対して、日本の安倍首相による公式訪問よりも重要なものはない」と述べていたが、この言葉の通りの歓迎を受けたと言える。

また、同「エイジ紙」によると、「アボット首相は明確には言わないものの、オーストラリアが強い日本を受け入れる理由は、我が国の安全を求めてのことだ」と、アボット首相が日本との関係緊密化において、軍事拡張を進める中国を意識していることを示唆した。

首脳会談の様子や、現地紙の報道から、オーストラリア側の安倍政権に対する期待が大きいことがうかがえる。

第一次安倍政権だった2007年3月、日豪両首脳の間で「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表して以来、両国の防衛協力・交流は着実に進展している。

中国の軍事拡張をけん制するためにも、アジア・オセアニア地域の各国と経済・安全保障分野で連携を深めていくことは重要だ。オーストラリアを初めとして、日本に期待する国は多く、日本としても一国平和主義では中国の軍拡に対応することは難しい。

今後もオーストラリアをはじめ、中国の軍事的脅威にさらされているベトナムなどの東南アジア諸国の期待に応え、関係を強化していくべきだ。(冨)

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