政府は、いわゆる「混合診療」の規制を大幅に緩和する方針を、新成長戦略に盛り込む見込みだ。
現在の医療制度では、政府に承認された治療行為は「保険診療」とされ、公的医療保険の対象として治療費の7割が支給される。一方、政府が承認していない新薬や、新たな治療方法などは「自由診療」とされ、全額自己負担となる。
「混合診療」とは、この「保険診療」と「自由診療」の組み合わせのこと。例えば、承認された外科治療と、未承認だが最新の新薬投与を併せて行う、といった場合だ。この場合、「外科治療分のみ保険の対象となり、新薬のみ全額自己負担」となればいいのだが、現状では、承認されている治療も含め、全てが自己負担となってしまう。事実上、治療の幅が狭められてしまっているのだ。
しかし、例外的に認められている混合診療も一部存在している。現在政府が検討しているのは、その「例外」を拡大するというもの。「混合診療」を認めるまでの審査期間を6週間以内と現状の4分の1に短縮し、実施できる病院も増やす。
これにより、医療の選択肢が増えれば、経済的に全額負担は難しい人でも、本人にとってより有効だと思える治療を受けやすくなる。「混合診療」を原則認めないというスタンス自体は変わっておらず、新たな治療法がどの程度認められるかも未知数だが、自由性が増すという意味では、制度改革の方向としては望ましいと言えるだろう。ただ、公的支出が増える可能性もあるため、その点は課題だ。
柔軟な医療行為を認める制度は、医学の変化や進化に適応していくためにも必要だ。例えば最近、がんの主要な治療法とされてきた、外科手術や抗がん剤投与の効果に疑問が持たれ始めている。一方、生活習慣を指導して「自然治癒力」を高める治療や、鍼灸など東洋医学的なアプローチが大きく見直されている。
しかし、西洋医学的な合理性が確認されない治療は政府の承認も下りないため、「自由診療」とならざるを得ない。医療制度が、治せる可能性のある医療行為を制限する面が強くなっているのだ。今後も、医療の変化や進化に対応できるよう、柔軟な医療制度を構築していかねばならない。(光)
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