中国で待ち望まれた民主化が無惨に踏みにじられた1989年の天安門事件。事件から25年を迎えた6月4日に合わせ、香港では大規模な追悼集会が催された。香港中心部に集まった参加者は、主催者発表で約18万人。「天安門事件」の再評価を中国共産党政府に求めた。

今年は例年に比べても、天安門事件に関係する活動家・メディアへの取り締まりが強化された。事件の遺族が北京市外に連行されたり、活動家や人権擁護派の弁護士が不明瞭な罪状で逮捕されたりといったニュースが、4~5月を通して報じられていた。取材する海外メディアへの妨害も激しく、先月末には、人権派弁護士に取材をした日経新聞の中国人スタッフが、中国の公安当局に拘束された。

人権派団体の「香港市民愛国民主運動支援連合会」が、中国における民主化の燈を受け継ごうとしている。同団体は今年4月、天安門事件に関する歴史的資料を展示する「六四記念館」を香港に開設。厳しい言論統制が敷かれる中国本土では知りえない「真実」を香港から発信している。

しかし、習近平・国家主席が就任して以来、人権弾圧は一層強まっているとも言われており、民主化運動に立ちはだかる大きな壁を前に、閉塞感が漂っていることは否めない。その中で日本は、中国の民主化を夢見る隣国として、「自由の革命」の砦としての役割を果たさねばならないが、中国の民主化運動を支援する地盤が日本にないのが現状だ。

1989年の天安門事件の学生指導者であった王丹氏が仮釈放後、亡命先に選んだのはアメリカ。中国での人工中絶や不妊手術の強制と戦った盲目の弁護士・陳光誠氏もアメリカに亡命している。亡命先に日本を選ぶ中国人が少ないことが、中国の民主化に貢献しきれない日本の現状を示している。

かつて、「三民主義」を掲げ、辛亥革命を成就させた孫文を支援し続けたのは、日本人だった。孫文らを精神的・経済的に支えた実業家・梅屋庄吉や、革命家・宮崎滔天がいなければ、辛亥革命は当時の中国で、大きなうねりとならなかったはずだ。

独裁国家・中国の拡大主義に対し、日本は、舌戦・言論戦、自衛隊の実効性強化で迎え討たねばならない。だが、国の外郭団体やNPOのような難民支援団体、資本家が、中国人運動家を十分に支援できる地盤を作ることも非常に大切だ。これもまた、日本政府の「積極的平和主義」の中に含まれて然るべきではないか。

(HS政経塾 森國英和)

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