ウクライナ大統領選挙がこのほど行われ、親欧派ペトロ・ポロシェンコ元外相が当選した。同氏は、「われわれの最初の一歩は戦闘や混乱、無秩序状態を終わらせることに重点を置く」と述べ、ウクライナ東部で独立運動をする親露派の活動を速やかに収束させるとともに、ロシアと協力する意向を示した。ロシアのラブロフ外相も25日、大統領選の結果を尊重し、ウクライナ政府と対話をする用意があると表明するなど、両国は早速、歩み寄りの姿勢を見せた。

当選したポロシェンコ氏は、大手菓子メーカー「ロシェン」を創業した実業家でもあり、親欧派と親露派のどちらの政権でも閣僚を務めるなど、幅広い層と協力できると評される。両派で分裂する国内の混乱を治めるためには、ポロシェンコ氏の実務力や経験、人脈などが必要だと認められたわけだ。

しかし、仮に国内の対立を解消したとしても、ウクライナの前途は明るいものではない。ウクライナの問題は、ソ連から独立した1991年から続く汚職や経済の低成長である。

ウクライナは汚職天国と言われ、汚職を監視するNGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」も、同国を「ロシアを含む欧州で汚職が最も深刻な国」とし、世界汚職ランキングでは、152位に位置づけている。家具メーカー「イケア」が、10年以上の歳月をかけても、同国に進出できないのは、政府高官に賄賂を贈らないからだという話は有名であり、ポロシェンコ氏も、「ウクライナの駄目な部分の象徴」と語っている。

ウクライナと同じく、ソ連から独立し、腐敗に悩んだポーランドは、1990年の1人当たりのGDPは、1700ドル程度であったが、2012年には、約1万3000ドルに拡大した。一方のウクライナは、約1500ドルから3800ドル程度にまでしか伸びておらず、いかにウクライナ経済が停滞しているかを示している。

結局、ウクライナは、国際通貨基金(IMF)やロシアからの融資に頼り切りになり、肝心の汚職対策も進まなかった。いつまでも自立しない体制が、大規模なデモや外国勢力の介入を招いたと言える。これらの問題を解決しない限り、国内が分裂する可能性が無くなるわけではない。

ウクライナは、「領土の一体性」と言って、ロシアを批判する前に、国内で対立し、「国民の一体性」を確保できていないことを反省すべきである。汚職や経済問題は、親欧派や親露派を問わず、国民の多くが望む問題であるのだから、ポロシェンコ氏は、これらの問題の解決に心血を注ぎ、国民の団結を促すべきだ。(慧)

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