安倍晋三首相の靖国参拝によって、憲法が保障する「平和的生存権」が侵害されたとして、戦没者の遺族を含む市民団体がこのほど、首相の靖国参拝の差し止めを求め、大阪地裁に提訴した。安倍首相をめぐる訴訟は全国で初めてだが、同様の訴訟が21日、東京地裁でも起こされる見通しだ。

原告は、太平洋戦争の戦死者が祀られる靖国神社に首相が参拝することは、戦争を美化する「戦争の準備行為」に当たると主張。その上、中国や韓国などとの関係を悪化させたことで、平和に生きる権利である「平和的生存権」が侵害されたという。

平和的生存権とは、日本国憲法の前文にある「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という文章から導き出された人権思想の1つだ。

しかし、平和的生存権で問題にすべきは、安倍首相の靖国参拝でなく、中国と韓国のほうだ。

中国は、尖閣諸島の領有権を主張して、日本の領海・領空侵犯を繰り返し、韓国も、日本の竹島を実効支配している。このように、中韓は現在ただいま、日本の平和を脅かし続けており、日本国憲法の前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」から見れば、到底「公正と信義に信頼」できる国とは言えない。

そもそも、平和的生存権という思想自体に問題がある。憲法前文の文言には、「恐怖と欠乏から免かれ」とあるが、戦争や飢餓などの危機から免れるために、軍事力を行使するのが国際常識であり、安全保障の観点が欠落している。

国のために亡くなった英霊に感謝と尊崇の思いを手向けることは、当たり前のこと。12日には新藤義孝・総務相が、靖国神社を参拝。記者会見で「戦争で命を落とした方々に哀悼を捧げることは、どこの国でも行われる」と述べたが、その通りだ。

日本は、現実の脅威を見据えて、憲法の前文や自衛隊のあり方も含めた憲法改正論議を深めなければならない。(慧)

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