政府は策定中の「エネルギー基本計画」において、かねてから研究が進められている高温ガス炉の推進を明記するとの方針を明らかにした。

高温ガス炉は原子力発電の方式の一つで、極めて安全性が高いと言われている。では、どのように安全なのだろうか。事故を起こした福島第一原子力発電所との比較で見てみよう。

東日本大震災の際、福島原発では原子炉が揺れを感知して、正常に緊急停止した。これにより発電が停止しても、核反応が完全に止まるまでには時間を要するので、その間は冷却を続ける必要がある。そのために予備電源のディーゼル発電機があるのだが、津波によってこれが水没してしまい、冷却ができなくなってしまった。その結果、核反応が停止する過程での熱が蓄積し、核燃料を覆う金属部分が熱で溶け、炉心溶融に到ったのである。

高温ガス炉では、このメカニズムによる事故を防ぐことができる。高温ガス炉の最大の特徴は、炉心の温度が上がり過ぎると核反応が自然に停止することだ。事故などで冷却系が止まり炉心の温度が上昇すると、核反応も止まる。さらに核燃料が、金属ではなく耐熱温度の高い黒鉛で覆われていて、炉心溶融の心配もない。2010年には、実際にあえて冷却系を止める実験を行って、安全に停止することが確認されている。

また、福島原発の事故では、温度が上がり過ぎた炉に水蒸気が触れて水素が発生し、水素爆発に至った。この点でも高温ガス炉は安全である。冷却系に水ではなくヘリウムガスを使用する高温ガス炉は、そもそも水素が発生しないため水素爆発の懸念もない。

さらに高温ガス炉には二次冷却水が不要なので、津波の心配のない内陸に建造することが可能だ。また同時に、高温ガス炉から発生する高温を有効利用して、燃料電池自動車などに使われる水素の製造もできる。メリットは大きいのだ。

今後国内では、安全確認が完了した原発から再稼働が進んでいく見込みだ。ところが別の問題として、原発の老朽化も課題として挙げられる。福島原発も、一号炉は40年が経過していた。原発はいずれ建て直さなければならないものだ。

原発技術は日々進化しており、実験段階にあるこの高温ガス炉も、安全性の高いスグレモノだ。より安全な新方式の原発建造こそ、日本経済の復活と国民の安全を両立する唯一の方法といえる。原子力技術をアレルギー反応のように拒絶するのではなく、安全性を高める新しい技術の研究開発の推進が望まれる。高温ガス炉は、当初の予定で2030年頃の実用が考えられていたが、これを前倒して一日も早く安全な原子炉を実現すべきだ。

(HS政経塾 田部雄治)

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