ドイツを訪問中の中国の習近平国家主席が、28日にベルリンで講演した。講演では、「日中戦争において、日本が3500万人の中国人を死傷させ、南京事件では30万人も虐殺した」と、一方的な日本への批判を展開した。

さらには、南京事件当時に現地に駐在した商社マンで、南京事件の際に中国民間人を保護したとされているジョン・ラーベを「中独友好を示す感動的な話のひとつ」とたたえた。なお、ジョン・ラーベはナチス幹部でもあり、当時の記録をつづった『南京の真実』は、多数の嘘や捏造が指摘されている。

習主席のこのやり方は、韓国の朴槿恵大統領が、欧米諸国訪問の際に、従軍慰安婦問題を持ち出して日本を非難する「告げ口外交」を彷彿させる。安重根のようなテロリストや、ラーベのような政治的中立性が疑われ、批判も多い人物を「英雄視」する手法までそっくりだ。

中国の最高指導者が、歴史問題をカードに本格的な対日批判に踏み切ったことについて「深刻な事態」と見る向きもあるが、むしろ中国は追い詰められ、暴走しているようにも見える。

先日行われた日米韓の首脳会談でも、朴大統領は日本の歴史問題に触れなかった。翌日のメルケル首相との夕食会においても、それまでの「告げ口外交」は影を潜めた。韓国は、自国の安全保障のためには日米との連携が必要であることにようやく気づいたのだ。

これは、歴史問題をカードに、対日路線で韓国と共闘しようとしていた習主席にとっては面白くなかっただろう。さらに、南京大虐殺の信憑性を疑う論調が高まってきたり、国際社会から自国民や「自治区」の住人への人権弾圧について非難が高まったりしている現状もある。

さらに中国は、4月下旬に中国で開催される海軍シンポジウム参加国20カ国のうち、日本の海上自衛隊だけを同時期に行われる国際観艦式に招待しないという嫌がらせもしている。

一般的に、告げ口や嫌がらせは、弱い立場の人がすることだ。結果的に、そうした卑怯な行為をした人の方が多くの人に嫌われ、友人を失うことになる。

韓国も、日本の悪口を言って回ったことで、アメリカから「外交的礼儀を欠いている」「先進国の振る舞いではない」などと批判の声が出ている。

今回の習主席の「告げ口外交」も結果的に中国にとってマイナスしか生んでいないようだ。訪独に先立ち、ユダヤ人のホロコースト施設を訪問したいと打診した中国側に対し、ドイツ政府は即座に拒否。ドイツは、日中間の論争に巻き込まれることや、未だに批判の対象となっているナチスの歴史問題を持ち出されることを非常に嫌がっている。日ごろ、日本をナチスになぞらえて反日キャンペーンを行っている中国から今回のような発言が出たことも、ドイツにとっては不愉快極まりないだろう。

ドイツにとって中国は重要な輸出先であり、経済的な結びつきは強めたいとの思惑がある。しかし、人権問題を抱える中国との結びつきを危惧する国民の声もあり、距離のとり方を決めかねている。

そうした複雑な思いからか、29日付の独フランクフルター・アルゲマイネ紙は、ドイツと中国の関係を「パートナーだが友人ではない」と表現している。

嘘に満ちた歴史を世界に広げる中国はいずれ孤立するだろう。日本は堂々と、「南京大虐殺など無かった」「今の中国の人権弾圧行為をすぐさま改めよ」と反論すると共に、ドイツをはじめ自由主義諸国と真の友人関係を築きたい。(佳)

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