菅官房長官は4日午後の記者会見で、社説で「安倍首相の歴史修正主義」と批判した2日付米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT紙)に対して、「事実誤認がある」と抗議したことを明らかにした。
NYT紙は、安倍首相の「国家主義」が日米関係の深刻な脅威になっていると指摘。「首相らは、南京大虐殺は起きていなかったと主張している」「米国政府が首相の靖国神社参拝を牽制していたにもかかわらず、首相は参拝した」とし、首相の歴史観に苦言を呈した。
これに対し、日本政府は、「南京大虐殺はなかったなどと、首相は一切言っていない」として、「著しい事実誤認がある」と抗議した。「1937年の南京入城後、非戦闘員の殺害または略奪行為があったことは否定できない」という従来の見解を改めて説明し、火消しに走った。
しかし、NYT紙の指摘は誤ったものであるのと同時に、日本政府の対応も「南京大虐殺があった」とする中国の主張を認めているかのような誤解を国際社会に与えかねない、という点で看過できない。
中国は、1937年12月13日に旧日本軍が南京を攻略した後、数週間にわたって30万人の一般人・捕虜を虐殺したと主張しているが、東京裁判で証言したアメリカ人宣教師は、殺人を目撃した件数を「たった1件です」と答えている。また、南京攻略後、3週間で治安やライフラインが復旧し、1カ月後には陥落前の20万人から、人口が5万人も増えている。
これらの事実からも分かるように、「南京大虐殺」は、東京裁判で日本を悪魔の国に仕立て上げるためのプロパガンダ(政治的な意図を持った宣伝)だった。現在の日本政府も、「30万人の大虐殺」を認めているわけではなく、「南京における民間人や捕虜の被害は、ゼロではなかった」という立場だが、今回の抗議の表現では誤解を招くだろう。慰安婦の強制連行と同じく、「そのような歴史的な事実はない」と断言すべきである。
また、中国人部隊による日本人虐殺が行われた1937年7月末の通州事件や、大量の民間人が殺害された東京大空襲、推計20万人以上が亡くなったとされる広島・長崎への原爆投下を、NYT紙はどのように評価するのだろうか。このような視点で見ると、同紙をはじめとする欧米メディアの報道姿勢は、明らかに公平性を欠いていると言えよう。
さらに、昨年末の首相の靖国参拝に関する誤解も解かねばならない。当時、安倍首相は談話にて、「二度と戦争の惨禍に苦しむことが無い時代をつくらなければならない。アジアの友人、世界の友人と共に、世界全体の平和の実現を考える国でありたい」と誓った。
その証左として、靖国神社の昇殿参拝のみならず、同神社の境内にある「鎮霊社」にも、首相として初めて参拝した。ここには、西南戦争で賊軍として死した西郷隆盛や旧日本軍と戦った外国人兵士を含む、世界のあらゆる国の戦没者が祀られている。こうしたことから考えても、首相の参拝は「国家主義」という短絡的な言葉で形容できるものではなく、「自由と民主主義」に基づく「世界の平和」を祈る行為と言える。
安倍首相は、本心では河野談話や村山談話などの「歴史の見直し」に着手したいが、国内外で多くの課題を抱えているため、発表するタイミングを見計らっているのだと信じたい。そうだとしても、現在のみならず、過去や未来の日本に責任を持つ首相や官房長官は、もっと本質的な「抗議」を行い、日本の誇りを取り戻さねばならないはずだ。(HS政経塾 森國英和)
【関連記事】
2014年2月27日付本欄 「米議会調査局『安倍氏の歴史観は米国とぶつかる』 しかし、改めるべきは米国の歴史観」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7461
2014年1月24日付本欄 「『靖国参拝もうしない』米が日本に保証を要求 “たちの悪い”同盟国の内政干渉」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7292
2013年12月27日付本欄 「靖国参拝に米政府が『失望』 誤った歴史観に惑わされるな」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=7149
2013年9月号記事 「欧米にこそ歴史見直しが求められる(ウェブ・バージョン) - 編集長コラム」