JR西日本は、駅ホームでの乗客の転落や列車との接触事故を防止するため、新方式の「昇降式ホーム柵」を独自に開発。大阪の桜島駅1番ホーム(大阪市此花区)に国内で初めて導入し、現在、試験運用を開始している。

目の不自由な方や、最近ではスマートフォンやケータイの画面を見ながら歩く人が増えたことが原因の、駅ホームからの転落事故が少なくない。しかし、従来型の「可動式ホームドア」は設置面積が広く、ホーム幅が狭い場合は設置が難しい。また、乗降口の位置が固定されてしまうため、車両のドアの位置が異なる列車が複数乗り入れる駅では使えないなど課題も多く、導入が進んでいないのが現状だ。

現在、関西では、大手私鉄5社の駅にホームドアは設置されておらず、JR西の在来線ではわずかに2駅のみ。

今回、JR西日本が桜島駅に導入した「昇降式ホーム柵」は、高さ1・3メートルの伸縮式の支柱を25本、4~8・5メートル間隔でホーム端に160メートルにわたって設置し、支柱の間に張った5本のステンレス製ロープを上下させる方式だ。列車が到着して、車掌が支柱にあるセンサーに手をかざすと、ロープがホームから2メートルほどスライドして上がる仕組みになっており、乗客は、上がったロープの下をくぐって乗り降りする。この方式でなら、車両のドアの位置に関わらず対応して設置でき、低コストで済むという。

導入初日は、駆け込み乗車をしようとした乗客にセンサーが反応し、ロープが自動で上がらなくなる不具合が起きて、一時、駅員が手動で動かすなどのトラブルもあったが、乗客の乗降に大きな混乱もなく運用できたようだ。JR西日本では、本年3月末まで試験運用し、乗客の反応を確かめながら、本格導入できるかどうか検討しつつ、2017年度中の実用化を目指している。

生活を便利にするための交通機関が、利用者の命を危険にさらすものであってはならない。各鉄道会社は、設置の手間やコストを惜しまず、顧客サービス度を向上させるためにも、こうした「ホーム柵」の導入をどんどん進めてもらいたいものだ。(宮)

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