中国国防相が23日、尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定したことを受けて、日米両政府から強い非難の声が挙がっている。

防空識別圏は、不審機の領空侵犯を未然に防ぐために各国が領空の外側に設定している空域で、緊急発進(スクランブル)の対象となる。中国側が発表した防空識別圏は、すでに日本が設定しているものと大きく重複しており、両国の戦闘機が同時に緊急発進(スクランブル)するという事態に陥りかねない危険なものだ。尖閣諸島を巡る両国の緊張がさらに高まるのは必至だ。

国際ルールをまったく無視した今回の中国政府の発表に対して、外務省の伊原純一アジア大洋州局長は23日、「わが国固有の領土である尖閣諸島の領空を含むもので、全く受け入れることはできない」と厳しく抗議。

また、アメリカのケリー国務長官も、「東シナ海の現状を一方的に変えようとする行為」「不測の事態が起きるリスクを招くだけだ」と中国政府を強く非難する声明を出した。

だが中国側は、「準備が整い次第、ほかの防空識別圏を順次設置する」と発表しており、東シナ海のみならず、フィリピンやベトナムなど対立する南シナ海上空にも防空識別圏を一方的に設置する姿勢を見せている。「太平洋の半分はすでに中国のものだ」と言わんばかりの強気の姿勢である。

このような中国側の理不尽な主張の裏には、「経済や治安など、内政が上手くいっていないことを隠し、他国に強硬な姿勢を取ることで国民の不満を逸らすため」「日米同盟に対抗する習近平政権の強硬姿勢をアピールするため」「一方的に危機感を煽って、安倍政権に譲歩を迫るため」などの思惑があるのではと、さまざまなメディアが報じている。

そうであるならば、日本政府も自国の利益を守るために、もっと大胆な主張をすべきだろう。中国に対して抗議はしているものの、「言われっぱなし」「やられっぱなし」の感は否めない。物言わない姿勢を美徳とする価値観は、国際政治の場では通用しないのだ。

ましてや、中国はこれまで、日本が定めた防空識別圏に対して、「国際法上の根拠がない」として侵入し続けてきた張本人である。論理がまったく通用しない相手なのだから、上品に受け身で構えていては、どこまでも譲歩させられることになるだろう。

国際世論を味方につけることも大事だが、自らの言論力で打ち返していく姿勢もまだまだ必要だ。(雅)

2013年12月号記事 2020年「盟主」日本がアジアを守る──中国封じ込めの国防戦略

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6819

2013年10月24日付本欄 外務省が竹島・尖閣の自国PR動画を公開 靖国参拝自粛の安倍首相はちぐはぐな姿勢を正すべき

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6839