中国広東省の日刊紙「新快報」が、政府系企業の不正経理疑惑を報道して公安当局に拘束された同紙の陳永洲記者の釈放を求めていた問題で、27日、陳記者が「第三者から依頼を受け、記事を捏造して報酬を受け取った」と認めたことを受けて、同紙1面で謝罪文を掲載した。

新快報は、23日、24日と二日間に渡って、1面トップで陳記者の釈放を求め、公安当局を批判する記事を掲載していたが、一転してお詫びの姿勢に転じた。

しかし、具体的に誰が依頼をしたのかなど、肝心な部分は何も明らかになっていないため、「捏造したという発言は強要されたのではないか」という見方が強い。

実際、陳記者逮捕後の24日、共産党宣伝部門が国内メディアに対して「国営の新華社通信の配信記事と当局側の発表を掲載する以外は、独自取材による報道・論評は一切認めない」とする通達を出した(26日付読売新聞)。その通達以後は、新快報も記者釈放を求める記事の掲載を控えている。

この通達に従うなら、今後、中国国内のメディアはすべて、事実上、中国共産党の機関紙となる。

最近の中国は「報道の自由」の弾圧を強めている。

本欄でも紹介したが、中国は、国内の新聞やテレビなどの記者25万人に、マルクス主義などを学ぶ研修を義務付け、免許更新試験を実施するという。当局の意に沿わない記者は、一切記事を書くことが許されなくなるのだ。

このような言論統制は中国をどこへ導くのだろうか。

『アダム・スミス霊言による『新・国富論』』(大川隆法著)では、アダム・スミス霊が以下のように中国経済の限界を指摘している。

「自由な経済をつくるためには、『情報入手の自由』がなければならないんですよ。《中略》先進国になると、知識や情報をベースにした『智慧の経済学』に移行していくんですね。そして、智慧をつくるためには、『情報交換の自由』『情報入手の自由』が必要になるんです」「情報が自由に取れなければ、世界レベルでの、グローバル・ネットワーク下での経済を起こすことは不可能なんです」

今回の記者拘束事件の当事者である「新快報」は広東省に拠点を置いているが、広東省といえば、今年1月、共産党体制を批判する社説を差し替えられたとして問題となった週刊紙「南方週末」の発行元がある場所でもある。

広東省は、1979年から、中国の経済特区に指定されている、深セン(シンセン)市、珠海(シュカイ)市、汕頭(スワトウ)市を抱える。経済特区とは、外国の資本や技術の導入がしやすいように、他の地域の法律や制度を適用せず、外資系企業への税制優遇なども認められているエリアで、「報道の自由」「言論の自由」への意識も高い。

言論統制は、明らかに時代に逆行している。中国は経済発展のために、経済活動に一部自由を導入したが、この自由が一党独裁体制を揺るがすことを恐れているのだろう。しかし、自由を抑圧すればするほど、真実を求める国民の声は強くなる。インターネット上の言論弾圧も進んでいるが、すべてを取り締まることはできない。

仮に、言論の自由を完全に統制下に置くことができたとしても、その場合は、外資が中国から逃げていき、グローバル化に対応できず、経済の衰退が始まる。いずれにせよ、自由を奪い、国民を幸福にできないような体制は長く続くことはないだろう。中国が先進国になりたいならば、自由や民主主義といった普遍的な価値観を受け入れることだ。(佳)

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2013年10月24日付本欄 言論統制下の中国メディアが当局に抗議 「自由」を求める戦いが広がっている

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