中国財政省は大気汚染対策のため、北京市や天津市など6省市区に、日本円換算で約800億円を支出すると発表した。これら各地方政府は、今後5年間に大気汚染の改善目標を達成するための対策を策定している。今後5年では、大気汚染対策の資金として、全国で27兆円規模が見込まれている。

中国では経済発展にともない、大気汚染が深刻になっている。その原因には自動車の排ガスや工場のばい煙、暖房に使われる石炭からの煙などが挙げられる。大気汚染は、呼吸器障害の原因になるなど、住民の健康を害している。中国疾病コントロールセンターの調査では、今年大規模な有害濃霧が続いた地域は全土の面積の4分の1にもなり、そこに住む約6億人が被害を受けたという。

9月末から北京で開催されたテニスの中国オープンでは、大気汚染が原因とみられるめまいを訴える選手が出て、試合が中断する事態も起きた。今月6日には建国記念日の大型連休の帰省Uターンラッシュで自動車が大量に動き、大気汚染の数値が最悪値を示した。

中国政府は大気汚染対策のために9月、大都市圏の微小粒子状物質「PM2.5」の濃度を2017年までに2012年比で15~25%下げるなどの目標を打ち出した。それに伴い、原子力発電など化石燃料以外のエネルギー比率を13%に高め、また、排ガス規制を満たさない車を2017年には全面禁止にするという。

しかし、こうした対策に、中国共産党内の石油会社出身者で構成する派閥である「石油閥」が反発しているという。中国では中央政府が対策を打ち出したとしても、地方の党幹部は賄賂をもらえば環境対策に消極的となり、実行されないこともある。

大気汚染については国民の不満が募っているため、中国政府としても対策を急ぎたいが、経済成長も捨てがたいというジレンマに陥っているのだろう。

中国は西側諸国に経済発展のモデルを求め、一定の成功を収めた。その西側の国々はすでに、公害対策と経済発展という一見矛盾する課題に折り合いをつけてきている。日本も、公害克服のために官民を挙げて努力し、経済成長と公害克服を両立した。企業は公害問題を逆手にとって省エネ・低公害製品を開発し、世界にも売り込んでいる。

経済発展の目的は国民を幸福にすることである。まともな生活すらできない環境になってしまっては、経済発展も長続きしないだろう。中国は日本に見習い、国民が住みよい国になるよう努力すべきだ。(居)

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