安倍晋三首相は、17日からの秋季例大祭に合わせた靖国神社への参拝を見送る可能性が高いと、各メディアが報じている。10日付の読売新聞は、複数の政府関係者の話として、「首相は秋季例大祭での参拝はしないが、神前に供える『真榊料』を私費で奉納することで調整している」と伝えた。

安倍首相は、靖国参拝の時期について、8月15日の終戦記念日よりも、戦没者慰霊と平和祈念のための春秋の例大祭がふさわしいという考えを持っており、今回の秋季例大祭で参拝するかどうかが注目されている。その中、7日に飯島勲内閣官房参与が首相の参拝を希望する旨を大阪市での講演で述べたことに対し、中国外務省の華春榮報道官が強く牽制した。

中国や韓国が首相の靖国参拝に対して反対するのはいつものことだが、最近ではアメリカも、日中、日韓の関係悪化を懸念してか、警戒しているようだ。

今月3日、安全保障協議委員会(2プラス2)のため来日した、アメリカのジョン・ケリー国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官は、東京都千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花した。外国の要人としては1979年のアルゼンチン大統領以来、最高位の政府高官ということで、異例のこととして話題になった。

アメリカ側は、アメリカの戦没者を祀るアーリントン国立墓地で日本の防衛相が献花するのと同じように追悼したとコメントしているが、今回の献花は「靖国神社には参拝するな」というメッセージではないかという憶測が流れている。

安倍首相は5月の訪米の際、アメリカの外交専門誌に対し、バージニア州にあるアーリントン国立墓地を引き合いに出して、靖国神社は国のために命を捧げた人々を慰霊する施設であり、日本の指導者が参拝するのは極めて自然で、世界のどの国でも行っていることだと述べている。

ケリー国務長官とヘーゲル国防長官は千鳥ヶ淵を訪れることで、「アーリントンに対応するのは千鳥ヶ淵であり、靖国ではない」という見解を暗に示し、安倍首相の靖国参拝を牽制しているという見方もできる。

この見解はあくまで憶測だが、オバマ政権下でアメリカの日本に対する姿勢が変わってしまったのは確かだ。2002年、ブッシュ大統領(当時)は来日の際、明治神宮を参拝したが、本当は靖国神社の参拝を希望していたとも言われている。また、2001年から2006年までの在任中、毎年参拝していた小泉首相(当時)に関しても、アメリカはとくに問題にしなかった。

アメリカが日中韓の関係悪化を恐れるようになった背景には、中国や韓国が「日本が軍国主義化している」という執拗なプロパガンダを展開していることに加え、最近では、シリア問題で「世界の警察官ではない」と宣言したり、国内の財政問題が紛糾したりで、アメリカが極度に内向きになっている事情もあるだろう。「日本に面倒を起こしてほしくない」というのがアメリカの本音なのだ。

しかし、安倍首相も発言しているとおり、国の代表者が、国のために命をかけて戦った英霊を供養するのは、独立国として当たり前のことだ。安倍首相は正々堂々と靖国神社に参拝し、筋を通すべきと言える。国際社会での力関係が変化してきている今、いつまでも事なかれ主義の外交をしていては、国難を招くことになる。(紘)

【関連記事】

2013年10月号記事 安倍首相と天皇陛下は靖国神社に参拝を - The Liberty Opinion 3

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6541

WEB記事 天照大神の神示 安倍首相は靖国参拝で英霊に敬意を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6444

2013年8月16日付本欄 【社説読み比べ】首相の靖国参拝見送りの裏にある不毛な駆け引き

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6494