児童・生徒のいじめを禁じ、出席停止などの罰則を適用することを明記した「いじめ防止対策推進法」(以下、防止法)が、9月末に施行されたことを受け、各自治体が様々な取り組みを始めている。

防止法制定のきっかけとなった大津いじめ自殺事件が起こった滋賀県教委は、今月に入り、「ストップいじめアクションプラン」を大幅に改定。学校、子供、地域と保護者の取るべき行動を明確にした。各校にいじめ問題に対応する常設の対策委員会を設置したり、いじめの加害者と被害者だけでなく、周りで見ていた傍観者にも、いじめがあったことを学校側に伝えるように呼びかけている。

いじめ自殺を防ぐための取り組みが進んでいることは評価したい。しかし、同県教委のプランは、学校の責任を明確にしておらず、子供や地域・保護者との連帯責任にしているという印象が拭えない。

一方、兵庫県伊丹市では、「いじめ事案対応研修会」を開催。県警の講師が、「子どもの後ろ盾になると伝え、安心させる」「学校に対しては、事実確認と被害者側への説明を徹底する」ということを求めた(8日付神戸新聞電子版)。大津の事件でも、警察が介入したことによって事件の全容が明るみになった。防止法でも、警察との連携が推奨されており、最悪の事態を防ぐことが期待される。

だがそもそも、学校側がどのように対応するかという点が、最大の問題である。防止法では、学校に対して重大ないじめについては調査することが義務付けられているが、学校側が重大でないと判断すれば調査しなくても罰則はない。

9日には、NHKの朝の情報番組「あさイチ」が、いじめの実態について約1時間にわたって特集した。学校に相談したところいじめがエスカレートしたという親子の話や、被害者が雇う探偵がいじめの証拠を集める現状などが紹介された。いずれも、学校が善悪を指導できないためにいじめを解決できず、生徒や保護者から信頼を失っている様子がうかがえる。

同番組は、本誌で連載中の井澤一明氏が代表を務める一般財団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」を取材。学校に相談する際には、(1)文書にまとめる、(2)被害を具体的に伝える、(3)いつまでに何をしてもらいたいか、期限を区切る、というポイントを紹介した。

現状は、いじめの被害者が訴えても、学校側はなかなか動かないケースが多いという。「いじめは犯罪であり、指導しなくてはならない」という認識を、全国の学校や教職員が持たなければ、子供たちは安心して学校に通うことができない。(晴)

【関連書籍】

幸福の科学出版HP 『教育の使命』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=906

【関連記事】

2013年8月21日付本欄 いじめ自殺の連鎖止めるには 学校の「いじめ隠蔽」に処罰を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6515