政府の規制改革会議が、雇用制度改革案をまとめた。日雇い派遣の禁止など、民主党政権下で強化された雇用規制を緩和する。他にも、開業後5年以内の事業所を対象に、労使が合意した場合に限り、入社時に取り決めた解雇条件の下で解雇ができ、労働基準法で週40時間までと定められた労働時間の制約をなくして残業代を支払わなくてもよいという「雇用特区」の創設も検討している。

日雇い派遣というと、日々、職を探してネットカフェを転々とする失業中の若者を思い浮かべる人も多いかもしれない。

もちろん、そのようなケースもあるだろうが、約3600人の日雇い(1か月以内の雇い入れ)や2か月以内の短期派遣の労働者を対象に行った調査によれば、日雇いや短期派遣の仕事で生計を立てている人は8.5%に過ぎず、失業で求職活動中の人も17.7%にとどまった。

その他は、本業は自営業や正社員でありながら副業として従事しているケースが38.9%、学生や主婦が制度を利用しているケースが27.7%で、こちらが圧倒的に多い。(2011年・リクルートワークス研究所)

企業にとっても、急な注文が入った時や繁忙期に、一時的に労働力を増やせる日雇い派遣は、ありがたい存在だ。

日雇い派遣を禁止したからといってネットカフェ難民が減るわけではなく、逆に日雇い派遣の制度を使って働いていた7割弱の人たちの雇用機会が失われたということだ。

「雇用特区」については、働き方の自由度を広げ、ベンチャーの起業を促したいとの考えから提案されたが、厚生労働省が難色を示している。

一部全国紙では、この特区創設について「解雇特区」との見出しをつけて報じており、企業側が解雇しやすくすることに対する反発は強い。

一連の雇用制度改革は、アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」に盛り込まれたテーマの一つだ。

今までは、雇用に関する規制を強化したり、経営難に陥った企業が従業員を解雇せずに雇い続けた場合に補助金を支給したりして、失業者を出さないことを主眼に置いた対策を行ってきた。

これは資本主義経済の下では不自然な姿である。

業種別の有効求人倍率を見ると、製造業や事務職などは人手が余っているが、介護、医療分野、サービス・接客業等は人手不足であることが分かる。税金を使って人員を抱え込むよりも、働き方、雇い方の選択肢を広げ、人材を求めている業種に転職しやすくした方が建設的だ。雇用制度改革は、その一歩になるだろう。(佳)

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2013年11月号記事「ブラック企業」批判は資本主義の精神を傷つける - The Liberty Opinion 3

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2013年9月24日付本欄【そもそも解説】派遣のルールを緩めることは、働く人に不利? それとも有利?

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