オバマ米大統領は、インドネシアのバリ島で8日に開催される環太平洋経済連携協定(TPP)の首脳会合を欠席する。米連邦政府の予算不成立で、政府機能の一部が止まるという異常事態への対応を優先するためだ。

オバマ氏はTPP首脳会合以外にも、5日から12日にかけて予定していたアジア太平洋経済協力会議(APEC)、米・東南アジア諸国連合(ASEAN)、東アジアサミットへの参加、マレーシア、フィリピンへの訪問もキャンセルしている。

2期目のオバマ氏の主な外交課題は、アジアとの連携強化であり、この地域で影響力を増す中国をけん制する意味でも、今回の東南アジア歴訪の意味は大きいものだった。主要な会議では、ケリー国務長官が代役を務めるが、アメリカの存在感の低下は否めない。オバマ氏は「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言したばかりで、同国の衰えぶりは顕著だ。

一方、中国は影響力拡大に向け着々と動いている。

習近平・国家主席は3日、インドネシアの国会で演説。両国の連携を強調するが、その狙いはインドネシアを「手なずける」ことにある。フィリピンなどとの領土問題について対話で平和的に解決すると訴え、中国の発展はアジアと世界に脅威ではなく発展のチャンスをもたらすと語った。アメリカをけん制する発言も忘れることはなかった。

そんな中で、存在感を増しつつあるのが日本だ。TPP交渉においても、議長であるオバマ氏の欠席に伴い、日本が大きな役割を果たすことが期待されている。来年秋の中間選挙でアピールするため、「年内妥結」を目指すアメリカの通商代表部のフロマン代表は交渉の進め方に関し、甘利明・TPP担当相に相談を持ちかけている。

また、これまでのTPP交渉において、日本が交渉をリードする場面もあった。漁業補助金に関して完全な削減を訴えるアメリカと、反対する新興国との意見が対立した際、日本が折衷的な案を主張し、議論を前に進めている。「最も遅く交渉参加した日本のせいで交渉が遅れる」という各国の懸念を払拭し、むしろ交渉をリードする印象を与えたという。(3日付産経新聞)

勢いの衰えるアメリカに、覇権拡大をねらう中国。この構図は、アジア地域での安全保障にも共通するものだ。この両国のパワー・バランスの変化に伴い、アジア地域の平和や自由、民主主義を守るためには、日本が経済力や防衛力を強化し、国力を上げていかねばならない。それは、中国や北朝鮮などの一部の独裁国家をのぞいたアジア諸国が望む、唯一の「希望」と言えるだろう。(光)

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2013年10月2日付本欄 予算不成立で米政府機関がストップ 混乱の元は「オバマケア」

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