国連総会に出席するため訪米中の安倍晋三首相が、現地で活発に講演を重ねている。25日午後(日本時間26日未明)には、ニューヨーク証券取引所で講演。「世界経済回復のためには3語で十分。『Buy my Abenomics!(アベノミクスの経済政策は買いだ)』」と、日本への投資を促した。また、規制改革でアメリカのような「起業大国」を目指すとも表明した。

安倍首相は同日、米シンクタンクのハドソン研究所でも安全保障政策に関して講演。日本を「積極的平和主義の国」にしたいとして、集団的自衛権の行使や憲法改正の必要性、国家安全保障会議(NSC)設立について話した。安倍首相は前日の記者会見で、集団的自衛権の行使を認める場合はあくまで国益を基に判断し、地理的な拘束を設けないとしており、自衛隊の活動の幅を広げる意向を示している。

日本の国防強化について中韓両国は「右傾化」と批判しており、この批判をなぞった論調を取る海外メディアもあるが、安倍首相は講演でこれを牽制した。日本の防衛予算の増額は0.8%であるのに対し、軍事支出が世界2位で、しかも毎年10%以上の増額を20年以上続けている「隣国」があると指摘。「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのであれば、どうぞ呼んでいただきたい」と見得を切って見せた。

安倍首相は一連の講演で、日本が世界経済の牽引役になることを宣言し、防衛問題についても中国を牽制しつつ、日本が世界の安全により責任を持つ方向へと向かっていることを印象づけた。従来の内向きな日本のイメージを破り、世界を意識したメッセージ発信を行ったことについては評価したい。

しかし、講演した内容を、安倍首相が実現できるかが問題だ。安倍首相は予定通り消費増税に踏み切る意向だと言われている。1997年の例などから明らかなように、このまま消費税率を引き上げれば景気が急激に冷え込み、日本経済が壊滅してしまう。このような事態を招けば、「起業大国」を実現するのは無理だろう。

防衛政策では、安倍自民党は親中路線の公明党に対する配慮もあり、集団的自衛権の行使容認や憲法9条改正の問題を、夏の参院選の争点から外してしまった。公明党と連立を組みながらでは、国防強化にも限界がある。中国からの国防の脅威が目前に迫る中で、安倍首相は国防問題にどこまで本気なのだろうか。

今のままでは安倍政権は、海外に発信したメッセージと、国内での政治がズレてしまっている。講演のメッセージを嘘にしないために、安倍政権はより強力に経済発展を促すと同時に国防強化を進め、日本を世界のリーダー国にすべきである。(晴)

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