消費増税を受け、「診療報酬」上げを求める厚生省と、財政負担を心配する財務省との間で、綱引きが起きている。

医療機関や薬局などの報酬は、一部は受診者の自己負担で、大部分は健康保険や国費から支払われる。その医療行為ごとの価格である「診療報酬」は国が一律に決めており、初診料、薬の処方、注射、薬品などそれぞれに1点を10円とする点数が割り当てられている。

「診療報酬」は2年ごとに厚生労働省が改定する。次の決定が2014年であり、25日から来年度の改定に向けた議論が、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会で開始される予定だ。

消費増税実施の公算が強いと言われる状況を見て、厚生労働省や自民党関係議員、日本医師会などが今回の改訂で診療報酬の大幅な値上げを狙っている。医療機関が薬品や備品を購入する際、消費増税分を患者に負担させることは難しい。消費税が上がれば医療機関の負担が大きくなるのだ。

増税判断がリアリティを増す中で、医療界が悲鳴をあげていることがわかる。医療機関に直撃する影響を少しでも弱めようと、政府からの補償を増やそうとしている。それに対し、財政重視の財務省は社会保障費の増大になるとして懸念を示している。今後も、両者の綱引きは続きそうだ。

安倍晋三首相が消費増税分の経済的ダメージを緩和すべく、補正予算や低所得者への所得補償をめぐって、財務省と綱引きしているのと似た構図である。増税が避けられぬなら、他でまかなってもらおうということだ。

消費税増税の帰結は2通りだ。一つは、税率を上げた分、国民生活を圧迫するという帰結。もう一つは、国民負担を軽減するために、さらなるバラマキが行われることだ。これでは、そもそも増税しなければいいという話になる。しかも、国民を苦しめた上で補償するという、非効率な税金の使い方だ。どちらに転んでも、国は富まず、国民の生活は楽にならず、財政問題も解決しない。

増税が決まったことを前提に、こうした不毛な議論が始まっている。医療機関の負担増はもちろん避けるべきであるが、本当に必要な議論は国民をいかに富ませるかである。その原点に立って、増税を見直すべきだ。(光)

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