23日発売の週刊ポストが「完全解剖 日本の宗教 カネと実力 タブーに斬り込む!」という17ページにわたる大特集を展開している。「宗教にお金が集まり、大きな施設を持っている」という表面的な見方しかしていない上に、そもそも事実誤認や誤解に基づく記述が多い。

例えば、「優遇税制に守られた宗教団体」といった表現が至るところに登場し、宗教課税について「党派を超えて国益の議論をしてほしい」と提案している。

確かに宗教活動による収入は非課税であるし、固定資産税などもかからないことが多い。これをもって「優遇」と言っているのだが、これ自体が間違いだ。

宗教がなぜ非課税であるかは、根本的には、文字通り宗教が「聖域」であるからだ。宗教は神仏の導きを受けながら、共に人間の魂を救う仕事をしている。そこに徴税権力や警察権力が入り込むことは世俗の穢れを持ち込み、神仏の活動を邪魔することになる。

そうさせないために憲法の信教の自由の規定はあるし、刑法でも宗教行事を妨害したら逮捕されると定めている。憲法の精神を踏みにじるべきではないだろう。

石村耕治・白鴎大学大学院教授(税法)は、「宗教へのお布施(喜捨)と一般的な商業行為は区別されます。これはグローバル・スタンダードです」「宗教活動はそもそも課税の対象にならないから、そこから取らないことをもって特権とは言えません」と述べている(本誌2011年10月号)。

「優遇」ではなく、そもそも課税しようがないのだ。

なお、アメリカの宗教法人は牧師が職務上、政治的な発言をしただけで免税特権が剥奪されると書いているが、実態はまったく異なる。

牧師が宗教活動の一つとして政治的発言をしただけで直ちに免税特権が剥奪された事例が実際にあるわけではない。宗教団体の政治活動は実際は、別組織として社会福祉団体を設立すれば政治活動は可能であり、政治活動委員会(PAC)を設立すれば政治献金も自由にできる。

また、宗教の政治進出について「政教分離」の考え方をもって問題視しているが、意図的に知らないふりをしているようにしか見えない。

「政教分離という憲法原則は、国家権力が国民の自由な宗教活動に介入しないように、信教の自由を守るために、国家権力に向けて定められた原則です。決して国民や宗教団体に向けてつくられた原則ではありません」(本誌2011年10月号)

これは小林節・慶応大学教授(憲法学)の話だが、これ以外に政教分離の解釈はない。この特集の中に税法や憲法のまともな学者や専門家が登場していないことが、無理筋の議論を組み立てていることを示している。

サブタイトルに「錬金術、サイドビジネス、そして水面下で進む政界進出まで」とあるように、記事全体として神仏や信仰といった目に見えないものはまったく触れず、目に見えるものだけで宗教を理解しようとしているところに無理がある。

神仏の教えについて学ぶ宗教教育を中心に置く中高一貫校・幸福の科学学園について、宗教のサイドビジネスと位置づけたり、「普通の私立学校」と書いたりしているのは、神仏の尊さが分からないからだろう。

堕落した宗教は別にしても、真っ当な宗教は、神仏や天使・菩薩といった存在と共に協力しながら人の心や魂を救っている。例えば、多くの犠牲者を出した東日本大震災の後、迷った魂をどれだけあの世に導いたかを、宗教は問われることになる。

大川隆法・幸福の科学総裁は震災後、何度も東北に入り、亡くなった方々に向けてもメッセージを発している。

「まず申し上げておきたいのは、『この世は、最終的なすみかではない』ということです。(中略)この世を去った世界が、実は本当の世界なのです。今、あなたがたは、悔しい気持ちや、死んでも死に切れない気持ちでいっぱいであろうとは思いますが、それでも、そちらの世界が本当の世界なのです。あなたがたは、その本当の世界において、自分の人生を再設計しなければなりません」

そう述べたうえで、成仏するための反省のポイントとして「貪欲を去る」「怒りを捨てる」「宗教に対する悪意を反省する」「この世的な慢心を離れる」「疑いの心を捨て素直に心を開く」について丁寧に説いている(2011年5月28日、幸福の科学・仙台支部精舎での法話、大川隆法著『逆境の中の希望』第2章)

資金面や関連事業、政治活動などについての表面的な取材だけでは、宗教に「斬り込む」ことはできない。その姿勢を改め、ぜひ宗教の「聖域」に目を向けてもらいたいものだ。(織)

(この週刊ポストの特集の冒頭、オウム真理教を擁護した島田裕巳氏に「人を救えなくなった現代宗教」と語らせている。同氏の問題点については、別に記しておきたい)

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2011年10月号記事 白鴎大学大学院教授 石村 耕治 インタビュー Q.宗教活動にも課税すべきでは? A.世界の笑い者になります

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2710

2011年10月号記事 駒澤大学名誉教授  洗建インタビュー Q.お布施はサービスやモノの「対価」でしょ? A.尊い宗教活動への「喜捨」です

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2711

2011年10月号記事 「なぜ宗教は非課税なの?」ガチンコ論争 中村うさぎ×ザ・リバティ編集長

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2713

2011年10月号記事 慶應義塾大学教授・弁護士 小林 節インタビュー Q.「政教分離」だから、宗教が政治に関わってはだめ? A. 関わっていい。教義の自由があります

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2710