福島第一原発の事故に伴う損害賠償で、東京電力が企業や農家などに対する賠償基準を発表。観光業の風評被害では、事故のみならず地震や津波の影響も20%あるとして賠償額を減らしたことを、22日付の新聞各紙が報じた。

福島、茨城、栃木、群馬の4県の観光業の風評被害については、原則、昨年の売上高と比較して、減収分のうち、地震や津波など原発以外による20%分は対象外。たとえば、売上高が56%減った年商1千万円の旅館の場合、8月末までの賠償額は108万円になるという。

主要紙の見出しは次の通り。「観光減収の2割 賠償外」(読売)、「観光風評被害 賠償減額」(朝日)、「減収20%分 賠償対象外」(日経)、「減収2割賠償せず」(毎日)、「観光風評20%賠償せず」(産経)。読者に東電が責任逃れをしているような印象を与えている。朝日新聞は、「(東電に)加害者意識はあるんでしょうか」という福島市内の旅館業の男性の言葉を紹介。社説でも「被災者の視点で見直せ」と主張している。

しかし、震災発生後、被災地に最も大きなダメージを与えたのは、他ならぬマスコミの報道被害だ。

震災後、多くの新聞・雑誌・テレビなどのマスコミは、連日にわたって津波で家や車が流される場面を繰り返し報じ、読者や視聴者が飽きたと思ったら、今度は原発事故を報じ、危険性をあおり続けた。この様子は海外でも報じられ、世界中の人々に「日本は危険」というイメージを植え付けた。つまり、被災地が受けたのは風評被害などではない。マスコミの報道被害である。

国内外の企業が日本を脱出したり、被災地の物品が売れなくなったり、さまざまなイベントが中止・延期されるなど、マスコミの報道被害が被災地のみならず、日本経済に与えた悪影響は計り知れない。マスコミは東電の賠償を評価するのもいいが、まず自分たちが被災地並びに日本経済に与えた損失をはじき出して、分担し、賠償すべきだろう。(格)