オバマ米大統領は19日ワシントンで、中東和平交渉に関して、パレスチナとイスラエルの国境は「1967年の第3次中東戦争以前の境界線」を協議の出発点にすべきとの演説を行ったが、有力識者の論評が出始めている。
第3次中東戦争で、イスラエルはヨルダン領ヨルダン川西岸地区、エジプト領ガザ地区とシナイ半島、シリア領ゴラン高原を占領していることから、イスラエルのネタニヤフ首相は20日にオバマ大統領との会談で、「67年境界線への撤退を求めた」と反発し、提案の拒否を表明した。
これを受けてオバマ大統領は、22日にイスラエル・ロビー団体「米イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」で講演し、撤退を求めたのではなく、協議の出発点に過ぎないとイスラエル側に理解を求めたが、さらにその翌日にはネタニヤフ首相が同会合で改めてオバマ大統領の提案を拒否した。
ちなみに、最初の19日のオバマ演説について、オフェンシブ・リアリズムの代表的論者として知られる、シカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマーは中東の報道機関「アルジャジーラ・ネット」で批判している。その内容を少し紹介する。
- オバマの重要演説は、新味がなく、米国の中東政策重大な変更を行うことを示唆しなかったために感銘を与えられなかっただけでなく、イスラエルやパレスチナの人を怒らせた。
- オバマは歴史がつくられようとしているときに、重要な演説を行う格好の機会を台無しにしたのではないかという声もあるが、そもそも、オバマが外交面で動ける余地は驚くほどわずかしかないのが悲しい現実だ。
- オバマはイスラエルとパレスチナ双方を二国家解決に向けさせなければならず、それが米国を含めたすべての関係国にとって最善策であるということは分かっているが、2012年の大統領選挙が日々近づいてくるなかで、イスラエル・ロビーに背を向けることは間違いなくないだろう。
- さらにイスラエルやイスラエル・ロビーの問題に加えて、オバマは中東における出来事に対してほとんど影響力を持っていない。
- 要は、米国は中東において深刻な事態に陥っており、新たな政策を必要としているが、残念なことに近い将来にそうした政策が出てくる見通しはほとんどない。
イスラエル・パレスチナ問題は根本に宗教対立があるかぎり、そう簡単に解決することはできない。根本の解決には、やはり宗教融和が必要だ。(吉)
【参考記事】キリスト教vs.イスラム教
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=594
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