ノーベル自身も揺れた「軍縮か? 抑止力か?」 また平和賞が波紋呼ぶ

ノーベル自身も揺れた「軍縮か? 抑止力か?」 また平和賞が波紋呼ぶ

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《本記事のポイント》

  • 平和賞の「軍縮=平和」は、ノーベルの遺言から来ている
  • その奥にある、ノーベルを"振った"女性の影
  • ノーベル自身は「抑止力」を重視していた

 

「平和賞」は、「平和への貢献を称える賞」ではなく、「平和の難しさについて人々に考えさせる賞」と言うべきかもしれない。

 

今年のノーベル平和賞は、「核兵器禁止条約」の採択に尽力したNGO団体「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」に贈られた。

 

ノルウェーで開催された授賞式では、広島で被爆したサーロー節子さんが演説。「核兵器は必要悪ではなく絶対悪」と訴え、全ての国が条約を採択することを求めた。

 

今回の「平和賞」への評価を巡り、国際社会は割れている。

 

アメリカなどの核保有国は「安全保障環境の現実を無視している」として、核兵器禁止条約を批判。それらの国の大使は授賞式を欠席。事実上のボイコットを表明した。

 

確かに、今の段階でアメリカが、核を"率先して"放棄してしまえば、中国や北朝鮮の軍事拡張を、誰も止められなくなる。それによりアジアに全体主義が拡大してしまえば、結果的に、「民主活動家の劉暁波に平和賞を与えたのは何だったのですか?」ということにもなりかねない。

 

 

「軍縮=平和」のおくにはノーベルの遺言

実は、ノーベル平和賞における「軍縮=平和」という"教義"は、ノーベル賞の創設者である、アルフレッド・ノーベル(1833~1896)の「遺言」に端を発している。

 

ダイナマイトの発明者であるノーベルが、死の床に就いたとき、自身の資産を人類に貢献した者に与えるよう遺言したことは有名だ。その中で、「平和賞」の受賞対象者について、こう書かれている。

 

「国家間の友好、軍隊の廃止または、削減、及び平和会議の開催や推進のために最大もしくは最善の仕事をした人物に」

 

つまりノーベルは「軍縮・平和会議こそ、平和を守ることの中心だ」と、事実上、規定しているのだ。現在の選考委員会は、この「平和」の概念を広く解釈し、劉暁波のような民主活動家などにも当てはめている。しかし、同賞における「平和」の核心はあくまで「軍縮」「平和会議」であり、外すわけにはいかないのだ。

 

 

「軍縮」の奥にある一人の女性

ノーベルの「軍縮=平和」という遺言の奥には、一人の女性の影があると言われている。

 

ある時ノーベルは、新聞広告で秘書を募集した。それにより採用されたのが、ベルタ・フォン・ズットナーという女性。ノーベルは、そのベルタに恋心を持っていたが、実らなかった。というのも、彼女の元に、かつての恋人から「君なしでは生きられない」という電報が届き、1年もしないうちにノーベルの元を去ってしまったのだ。

 

彼の元を去ったベルタはその後、平和運動に身を投じることになる。それも、当時としてはかなり急進的な運動だ。彼女は、反戦小説『武器を捨てよ!』を執筆し、ヨーロッパ中で大きな評判を集めていた。その「武器を捨てよ」という著名の通り、彼女の平和主義は、話し合いによって武器を捨て、一足飛びに平和を実現しようというものであった。

 

ノーベルは、昔のよしみもあり、彼女との連絡は続け、平和活動への多額な資金援助も行った。そして、彼女の小説には激しく共鳴した。彼女がいなければ、平和賞創設はなかったと言われている。

 

「軍縮=平和」という考え方の背景には、彼女の姿があったのは明らかだ。その証拠に、ベルタ自身がノーベル平和賞を受賞している。

 

 

一方で、「驚異的な抑止力を発明したい」との思いも

しかしそんなノーベルであっても、「平和への近道は、軍縮か、抑止力か」ということについて、揺れ動きはあったようだ。

 

実はノーベル自身、抑止力の重要性を認めていた。ダイナマイトを発明する以前、ベルタに対してこう語っている。

 

「永遠に戦争が起きないようにするために、驚異的な抑止力を持った物質か機械を発明したい。敵と味方が、たった一秒間で、完全に相手を破壊できるような時代が到来すれば」「すべての文明国は、脅威のあまり戦争を放棄し、軍隊を解散させるだろう」

 

平和賞の理想主義からはまったく想像できないほどの、生粋のリアリズムだ。これが、ノーベルにダイナマイトを発明させる、一つの原動力となった可能性もある。

 

しかし、遺言に残した「平和の概念」は、全く逆のものとなっていた。

 

それが、かつて愛した女性が懸命に活動する姿に心を動かされたためなのか、晩年、新聞に「死の商人」などと書かれたことに心を痛め、汚名をそそぐために「理想主義寄り」の遺言を残したのかは分からない。

 

いずれにせよ、「今すぐ武器を捨てるよう呼びかけても、平和が来ない」ことは、ノーベルも自覚していた。そして、その考えを理想主義に傾かせたものは"個人的な事情"によるものであった可能性が高いことは、知っておいてもいいかもしれない。

 

ノーベルも悩んだように、平和への道は決して、単調ではない。「足は大地に、目は星に」という言葉があるように、「核廃絶・軍事力廃絶」の理想を持ちながらも、その実現には智慧をもって臨む必要がある。

(馬場光太郎)

 

【関連記事】

2016年3月号 世界で最も核兵器に無防備な日本――中国、北朝鮮の核をどう止めるか(Webバージョン) - 編集長コラム

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タグ: ノーベル平和賞  ICAN  核兵器廃絶国際キャンペーン  軍縮  抑止力  ダイナマイト  

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