《本記事のポイント》

  • 北朝鮮に拘束されていた米学生が死亡し、米国内で北への人権侵害批判が高まっている。
  • アメリカが批判の根拠にする基本的人権には、宗教的な信条がある。
  • 北朝鮮の体制転換には、経済制裁や軍事圧力に加え、思想の啓蒙が必要だ。

北朝鮮に2016年1月から拘束され、昏睡状態のまま、先週の6月13日にアメリカに帰国したばかりだったアメリカ人で元バージニア大学生のオットー・ワームビア氏が、19日に亡くなったことを家族が発表した。

トランプ米大統領は、「法の支配や基本的人権を尊重しない体制による無実の人々への悲劇を防ぐ、我が政権の決意は一層深まった」と述べ、北朝鮮を強く非難した。

米国内で高まる対北朝鮮非難の声

アメリカでは、北朝鮮の人権侵害に対する非難の声がこれまで以上に強まっている。

共和党のロブ・ポートマン上院議員は「北朝鮮政権が1年以上(ワームビア氏に対する)領事面会を許可しなかったのは、どれだけ人権を無視しているかを示す事例だ」と批判。

民主党のエドワード・マーキー上院議員も「ワームビア氏が非常に重篤な状況に陥っているのにもかかわらず、北朝鮮が同氏を長期間拘束したのは、普遍的な人道規範に違反しており、容認できない行動だ」と非難した。

自国民が北朝鮮に捕らえられ、昏睡状態で解放されたことを考えれば、北朝鮮への批判の声が高まるのは当然だ。「北朝鮮に対して報復すべきだ」という気運も強まりつつある。

特に、人権意識が強いアメリカ国民が犠牲となった事件は、今後の米朝関係を一気に緊張化させる「引き金」になる可能性もあると言われている。

人権の根拠は「人間は神の子」という思想

アメリカが批判の根拠にする基本的人権のバックボーンには、宗教的な信条がある。アメリカ独立宣言には、「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって(中略)不可侵の権利を与えられている」と書かれている。

それについて、大川隆法・幸福の科学総裁は著書『宗教立国の精神』の中でこう述べている。

アメリカの独立宣言やリンカンの演説にある、『人間は平等につくられている』という言葉のなかには、明らかに、『神の子としての本質、尊厳、そういう立派なものが人間のなかに宿っている』という思想が流れており、それが、キリスト教のなかにも入っていることは絶対に否定できないのです(中略)近代のキリスト教国における『人権思想』というものは、日本で言う『人間は神の子、仏の子である』という考え方と同じものであり、表現が違うだけなのです

北朝鮮では、信教の自由がないに等しい。北朝鮮のキリスト教徒は、聖書を保持しているだけで逮捕され、拷問で殺されることもあるという。無神論国家の北朝鮮には「人間は、神の子・仏の子であり、大切にすべき素晴らしい存在である」という考え方がないために、人の命が極めて軽く扱われ、あらゆる人権が侵害されている状態だ。

思想の啓蒙で内側からの改革を

北朝鮮の独裁体制や、人権問題を解決するには、経済制裁や軍事的な圧力など、外部からの力に加え、一人ひとりの心を変える思想的な啓蒙も必要になってくる。

以前、本欄では、命懸けで北朝鮮の地下教会にキリスト教を布教する脱北者の活動を紹介したが、その方は「独裁政権を崩壊させる重要な要素の一つが宗教の力だと思う」と語っていた(文末の関連記事参照)。

北朝鮮内部には、金正恩体制に批判的な政府高官や国民も少なくない。北朝鮮の民主化を使命としている脱北者が数多くいる。こうした力を結集し、北朝鮮への啓蒙を進め、内側からの体制転換のうねりを起こしていくことが必要だ。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『宗教立国の精神』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=89

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