幸福の科学製作の映画「君のまなざし」の初日舞台挨拶の様子。

(2017年5月号記事一部再掲)

大川隆法・幸福の科学総裁が製作総指揮と原案を手掛ける映画「君のまなざし」が、全国映画動員ランキングで、ディズニー映画や人気アニメなどがひしめく中、初登場6位につけた。

幸福の科学は、20年以上前から映画をつくり続けている。その意図とは、何なのだろうか。

軽視できない映画の精神作用――「うつ」「殺人」につながることも

人は映画を観て感動したいもの。しかし、話題の映画や有名な賞を受賞した映画を観て、残念な気持ちになった経験はないだろうか。

例えば、暴力や殺人の狂気が描かれ、絶望で終わる作品。近年、日本でも「イヤミス」(イヤな気持ちになるミステリー)と呼ばれ、後味の悪さが病みつきになると騒がれている。専門家から「人間の闇を描き切った」「考えさせられる」と評価を受けることも多い。

観た人や社会に議論を巻き起こすなど、衝撃を与えることがヒットにつながるのは事実だ。しかし一方で、思わぬ影響を及ぼすこともある。

2000年に公開された映画「バトル・ロワイアル」は、興行収入30億円を超えるヒット作となった。しかし、国家の命令で中学生同士が殺し合うという設定や殺人シーンは物議をかもし、15歳未満の鑑賞を制限する事態となった。しかも2004年、この作品を繰り返しDVDで鑑賞し、映画を真似た自作の小説を書いていた長崎県佐世保市の小学6年生の女児が、同級生を殺害する事件が発生。社会に対する甚大な影響が懸念され、続編のDVDの発売が延期された。

アメリカでも、映画が予期せぬ事態を引き起こした例がある。ニュースサイトで「2000年以降に制作された物議を醸す映画20本」に選ばれた映画「パッション」。イエス・キリストが鞭やくぎで痛めつけられ、血まみれになって十字架にかけられる場面があるが、公開中に50代の女性が心臓発作でショック死する事件が起きた。

また、映画「アンチクライスト」は、虐待など残酷で暴力的なシーンを生々しく描き、絶望的な結末で終わる。カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で初公開された際、鑑賞中に4人が気絶。実は監督のラース・フォン・トリアー氏は映画の製作期間中にうつ病を発症し、一時休業を余儀なくされていた。

「単なるエンターテインメント」と見過ごせないほど、映画は強い影響力を持っている。

11作品を世に問うてきた幸福の科学

そんな問題意識の中、1994年の「ノストラダムス戦慄の啓示」から映画事業を始めた幸福の科学。今年5月公開の「君のまなざし」で、11作目となる。

幸福の科学の過去の映画一覧

そこに込められた意図とは何だったのだろうか。

「第1作から、次元も時間も違うあの世の様々な世界、さらには宇宙人まで出てきました。最初は作品のコンセプトが見えなかったり、スタッフも自分が作っているものがどのようなものかまったく分からず、作品が完成してやっと分かったということもありました。しかし、今見ても古くない、歴史に長く残る作品だと考えています」

1994年公開の「ノストラダムス戦慄の啓示」(以下、「ノストラ」)で総合プロデューサーを務めた幸福の科学の小田正鏡氏は語る。

幸福の科学の映画は、製作総指揮者の大川隆法・幸福の科学総裁が公開の何年も前に描いた構想から始まる。それを脚本家や監督が、実写やアニメという形で表現してきた。 いずれの作品も、「霊界や魂、宇宙人の存在などを明確に肯定」し、それを詳細に描く。

また、政治の失敗で戦争が起きたり、唯物論・無神論が広がって天変地異など世界的な危機が訪れるという、神仏から見た未来予言が織り込まれる。その中に、一人ひとりが使命に目覚め、行動することで明るい未来が開けるという、前向きなメッセージが込められているのが特徴だ。

幸福の科学の映画事業でプロデューサーを務めてきた松本弘司氏はこう語る。

「世相を見ると、作品を発信する側の責任を感じます。殺人や犯罪を描いた作品を世に送り出し、それに影響される人が出ています。だから、観ると神に通じていく天国的な作品を作る責任はあると思うんです」

第1作目から「常識」破壊

「ノストラ」のストーリーはこうだ。地球が人々の悪想念に包まれ、「1999年に人類が滅亡する」というノストラダムスの予言の実現を天上界は危惧していた。天使たちの働きかけで地上に生きる人々が、生まれる前にいた天上界での誓いを思い出し、それぞれが使命を果たすことで未来を変えていく――。

本作の監督である粟屋友美子氏は原作の書籍『ノストラダムス戦慄の啓示』のCMを手掛けた縁で監督を引き受けた。

「シナリオを見て、初めはピンと来なかったのですが、天なる神である『主』から見た視点で進行するストーリーだと分かりました。私は映像を制作する時は必ず特撮を使って演出をしていたのですが、幸福の科学で打ち出されている霊界の構造を、いかに実写でリアルに描くかは大きな挑戦でした」

前出の松本氏もこう語る。

「普通、映画は、誰か一人の視点を中心に話が展開します。しかし、この映画の視点はあえて言えば『神のまなざし』です。観て『神と目が合った』と感じることができる映画です」

映画「ノストラダムス戦慄の啓示」で、地上を見守る天使が集う7次元コントロールゾーンのシーン。

(左)「ノストラ」公開初日の様子。 (右)「ノストラ」の生まれ変わりのドームの様子。

宗教映画は「自由な世界」

幸福の科学の映画に携わってきた人たちは、この映画事業をどう捉えているのだろうか。

2012年の「ファイナル・ジャッジメント」から映画宣伝を担当する東京テアトルの担当者は、「当初は不安を感じたものの、これまで経験したことのない新たな可能性への期待も持った」と話す。

「最初は劇場やマスコミから『布教のための映画なのでは』と抵抗がありました。ただ、全ての映画は何らかのメッセージを発信しているという点で、ある種の布教とも考えられます。そう言い聞かせながら宣伝を重ねるうちに、理解を得られ始めました。幸福の科学の映画は、エンターテインメントをまとった人生の普遍的テーマを、あらゆる世代が見て共感できることが特徴だと感じます」

「UFO学園の秘密」のワンシーン。

「UFO学園の秘密」などアニメ映画の監督を務めてきた今掛勇氏は、「太陽の法」から幸福の科学の映画に携わる。

「一般的に、宗教が作る映画は、『自由を奪われる』というイメージがあるかと思いますが、いざ製作に参加してみると、その世界は果てしなく広がっていて、自由になりきれないくらい自由な世界だと分かりました。例えばアニメでは毎回、『光』の表現を変えています。どこまで求めても届かない永遠の憧れを描いているという感覚です」

「仏陀再誕」のワンシーン。

「仏陀再誕」で音響監督を務めた宇井孝司氏も、「毎回変わる光に、どんな音を合わせるか、考えに考える」と話す。

「幸福の科学の映画を作る皆さんは、信念があって、やりたいことがはっきりしているので、お手伝いしやすいんです。

例えば、長い説法が入るのはアニメでは異例ですが、監督やプロデューサーと話す中で、そこが大事なのだと分かる。そこで、初めての方も違和感なく聞くには、どういう音がいいのだろうかと考えていると、聞こえてくるんです。人間の私が作っているのではなくて、『見せてもらっている』『聞かせてもらっている』と感じます」

「天使に"アイム・ファイン"」のワンシーン。

実写映画「天使に"アイム・ファイン"」の監督である園田映人氏はこう話す。

「幸福の科学が打ち出しているのは『地球にとって大きくプラスになる』考え方。他の映画と一線を画すのは『世の中をよくしよう』という明確な方向性があることだと考えています」

表現は様々だが、幸福の科学という宗教が信念に基づいて映画を作る過程で、様々な表現が生まれ、映画の可能性を切り拓いていることがうかがえる。

海外にこそ伝わる

映画を観た人からはどのような反響があったのか。

「仏陀再誕」は、カナダのウォータールーアニメ映画祭で上映された。監督の石山タカ明氏はこう話す。

「映画祭の主催者側から連絡を頂き、『ぜひ上映したい』ということだったので、現地に向かいました。しかも、なんと、映画祭のトップバッターで上映されました。質疑応答でも、『この映画はどこまで真実なのか』などと、時間オーバーになるほどさまざまな質問を受けました」

「神秘の法」はアメリカのヒューストン国際映画祭で、グランプリに次ぐ賞を受賞した。

「観客からも、『この映画は世界が正しい方向に向かうための一歩になると思う』『地球は愛の星だ』などと声が寄せられましたし、『八正道(*)の教えが大切だと分かった』という白人の大学生の感想には驚かされました。国籍や人種、年齢に関係なく作品に込めたメッセージをきちんと受け取ってくれていたので、うれしかったです。分かってもらえるだろうかと不安に思っていた自分を、むしろ反省しました」(今掛氏)

世界に目を向ければ、テロや紛争、独裁者による圧政など、解決の見えない争いが続く。世界の人々が求めているのは、人間の本来の姿や生まれ変わりの秘密、争いを乗り越えて、世界を一つにできる新しい教えだ。映画事業を通じて、幸福の科学にその教えがあることを世界に伝えていこうとしている。

(*)仏陀が菩提樹下で開いた悟りであり、自らの思いと行いを振り返る8つの点検徳目。主人公の獅子丸翔は八正道を行じ、本来の使命に目覚める。

(左)ネパールでの「仏陀再誕」上映会の様子。 (右)アメリカでの「UFO学園の秘密」上映会の様子。

【関連サイト】

「君のまなざし」公式サイト

http://kimimana-movie.jp/

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