《本記事のポイント》

  • 大統領令は法律と同等の拘束力を持つ命令
  • 巨大な国家の効率的な統治には、迅速性や責任の明確化が大事
  • 有事の際などの責任が明確でない日本にも参考になる

トランプ大統領が大統領選中から主張していた、メキシコとの国境に壁を築く政策が、大統領令への署名により、実行に向けて動き始めることとなった。

また、トランプ大統領は、大統領就任当日にもオバマ前政権が進めた医療保険制度改革(オバマケア)を廃止する方向での大統領令や、TPPからの離脱に向けての大統領令に署名するなど、新任早々、大統領令を連発している。

そもそも、アメリカの大統領令とは何なのだろうか。

法律と同等の拘束力を持つ命令

大統領令はこれまで歴史的に、アメリカ合衆国憲法2章1条1項の、「執行権はアメリカ大統領に属する」、等の内容を根拠に、アメリカ国内で連邦政府や軍に対して出す法律と同等の拘束力を持つ命令として出されてきた。

大統領令のメリットは、合衆国憲法に規定されている立法プロセスを省略して、迅速に法律と同等の効力をもった命令を発する事が出来る点にある。大統領令は、リンカーンによる奴隷解放令から番号が振られており、その他の大統領令として有名なものは、ウィルソンによる第一次世界大戦参戦などがある。

日本の首相にはこのような権限はない。アメリカは大統領制によって国民から直接大統領が選ばれる。日米では国のリーダーの選び方が違うこともあり、大統領令というものをイメージしにくいかもしれない。

行政に迅速性と責任を保つ

なぜ、大統領令というものが存在するのだろうか。話は合衆国建国の際に大統領制を採用したときにさかのぼる。

建国時、アメリカ独立宣言の署名者かつ憲法の草稿作成の中心人物であり、アメリカ合衆国建国の父の1人であるジェームズ・ウィルソンは、合衆国のような巨大な国家で効率的な統治を行う際に、単独の強力な行政首長をおき、行政に迅速性や責任を保つことと、明確な国家の元首としての大統領という存在が必要と考えた。

もちろん、この大統領令にも制限が加えられている。大統領令を止めるためには、それを覆す法律を議会で制定し大統領に認めさせること、または、大統領令が合衆国憲法や法律に触れていると考えられる場合は裁判所に訴えること、という手段がある。

オバマ前大統領の就任期間は、オバマ氏率いる民主党と議会で多数派を握る共和党との対立があったため、オバマ氏の求める法律が議会を通過できないことが多く、その結果、オバマ大統領は銃規制など議会の反対が多い分野で大統領令を発令した。それが、現在トランプ新大統領の出す大統領令によって覆され始めている状況だ。

大統領令においては、大統領が明確に国家の元首として責任を負い、迅速なリーダーシップを発揮し、また有事の際の意思決定を早くすることが出来る。議会制民主主義を採る日本だが、例えば有事の際などに、誰が責任を取るのか明確でない。このシステムは、日本の未来の政治のあり方を考える上で非常に参考になるのではないだろうか。(瑛)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『守護霊インタビュー ドナルド・トランプ アメリカ復活への戦略』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1613

幸福の科学出版 『アメリカ合衆国建国の父 ジョージ・ワシントンの霊言』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1751

【関連記事】

2017月1月24日付本欄 「The Economist」の表紙が本質的な件 トランプ大統領はワシントン!?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12520

2017年1月24日付本欄 トランプ新大統領の貿易政策(前編) 「自由貿易は正義」という誤解

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12518

2017年1月22日付本欄 【社説読み比べ】トランプ米大統領「アメリカ・ファースト」への戸惑い広がる

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12483