アメリカのドナルド・トランプ氏の大統領就任を控えて、今後、国際的に「グローバリズムの流れが断ち切られる」という分析が増えている。

グローバリズムとは、貿易や金融などにおいて国家の枠を超え、世界を一つのルールで統一しようというもの。ソ連崩壊後の1990年代以降に世界に広まり、国境を超えて商売をする多国籍企業が台頭した。

この流れが、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ新大統領の誕生によって後退する、というのだ。多くのマスコミは、この「トランプ革命」に懸念を示しているが、グローバリズムはそんなに大事な概念なのか。

揺らぐグローバリズムの象徴

グローバリズムの象徴と言えば、政府や企業が発行した金融商品を評価する「格付け会社」がある。現在、投資家や企業家は、この評価を参考に資金のやり取りを行っている。世界では、ムーディーズやスタンダート・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングスが、代表的な格付け会社として有名だ。

いずれも、アメリカに本拠を置いている。そのため、「アメリカ的な価値観」によって、一方的に世界中の金融商品を格付けしている、と批判されている。例えば日本国債であれば、経済危機が叫ばれている韓国よりも、低く評価されている(下表)。

だが、日本のマスコミは、この不当な評価を疑問視せずに、むしろ、消費増税などの増税路線を正当化する有力な根拠としてきた。

国名ムーディーズS&Pフィッチ
ドイツAaaAAAAAA
オーストラリアAaaAAAAAA
アメリカAaaAA+AAA
香港Aa1AA+AAA
オーストリアAa1AA+AA+
韓国Aa2AAAA-
ベルギーAa3AAAA-
中国Aa3AA-A+
エストニアA1AA-A+
日本A1A+A
主要3社の国債格付け一覧。最高評価がAaa/AAAで、次にAa/AA、A/Aと後に続く。これに加えて、+と―もあり、評価は3段階に分かれている。

信用ならない格付け会社

では具体的に、どう評価しているのか。それについて、嘉悦大学教授の高橋洋一氏はこんな興味深いことを述べている。

「格付け会社がどのように格付けを行っているかを聞いてみたら、その回答にとてもびっくりした。予算書などはまったく読まずに、大雑把な概括的な数字だけで格付けしていたのだ。これは、財務諸表を見ないで周辺情報だけで会社の信用度を判断しているに等しいので、大いに呆れたわけだ。いってみれば、格付け会社の情報は、マスコミが客観的な指標に基づかないで定性的に話すレベルと大差なかった」(2015年2月12日付Business Journal)

すべての会社がこのような状況であるとは言い切れないが、信用ならない会社も存在していることは間違いないだろう。

グローバリズムは共産主義に似てくる

そもそも、グローバリズムには、世界を一つの価値観に染め上げるという点において、結果として、共産主義に似てくるという問題がある。

共産主義はその理想に反して、一部の権力者が富を独占し、貧しい者は貧しいままという絶望的な格差社会を作り出してきた。

近年、グローバリズムの流れに乗った一部の多国籍企業が莫大な富を得たものの、本来所属している国に富を還元せず、その国の経済が低迷する状況も生まれてきた。

だからと言って、「反グローバリズム」で排外主義的な右翼政党が台頭するヨーロッパ諸国の流れを、単純に肯定するわけにもいかない。

「グローバリズム」か「反グローバリズム」かの単純な二者択一ではなく、一人ひとりが自分の国に責任を持って、勤勉に働き、発展を目指す。いま世界の国々や人々に必要とされているのは、そうした当たり前の「自助努力(セルフ・ヘルプ)の精神」だろう。

(山本慧)

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