イタリアでの国民投票と、オーストリアでの大統領選挙の結果が5日、明らかになった。

イタリアでの国民投票は、議会上院の権限を縮小し、下院の承認だけで法案を可決できるようにするという、レンツィ首相が掲げる憲法改正案についての是非を問うものだった。結果は反対が賛成を大きく上回り、これを受けてレンツィ首相は辞意を表明した。

レンツィ首相の辞任で、反ユーロを掲げる政党「五つ星運動」が2017年の総選挙で政権を握る可能性が濃厚になっている。もし「五つ星運動」が充分な議席を得れば、同政党が以前から求めていたイタリアのヨーロッパ連合(EU)離脱についての国民投票が実施される可能性もある。EU加盟国の中で3番目の経済規模を持つイタリアでは、EUに対して不満を持つ国民も多い。

一方、オーストリアの大統領選挙では、難民や移民の受け入れの厳格化を主張し、国内外から極右と指摘されてきた右派政党、自由党の候補の敗北が確実になった。欧米メディアは今回の選挙について、「EUで初めて極右の国家元首が誕生する可能性がある」と伝えていた。

来年選挙があるフランスやオランダなどでも、難民や移民に不寛容な右派政党が台頭している。今回、ひとまず極右といわれる政党が一国の政権を握ることは免れたとして、安堵感が漂っていると報じられている。

EU各国に必要な自立の精神

EUはさまざまな問題に直面している。

イギリスは6月の国民投票で史上初めてEUから離脱する国になることを選び、世界に衝撃を与えた。EU加盟国の経済力にはばらつきがあり、弱小国が経済的に豊かな国にしがみつく構図が問題だ。この構図が続く限り、EUとしての経済成長は到底望めず、むしろ没落していく可能性の方が高い。言語、文化、民族が違う多くの国々を一つの原則の下に統治すること自体に無理があるといえる。

大川隆法・幸福の科学総裁は、今から約25年も前に、こう指摘している。

いま統合に向かっているEC(EUの前身)は、大きな破局を迎えるはずです。(中略)どのような形をつくっても、これはやがて崩壊します。国が集まれば強くなると思って、問題のある国どうしが欲得で集まっているのですが、強い国が集まれば強くなりますけれども、ガタガタの国どうしが集まって強くなることなど絶対にありません。これはお互いの病気が感染しあうだけです 」(大川隆法著『理想国家日本の条件』所収)

この点から考えれば、イギリスのEU離脱を受けて、ドイツ、フランス、イタリアなどの経済規模の大きなEU加盟国でEU離脱の世論が高まっているのは、当然の流れと言える。

経済問題の中には、中東から押し寄せる移民の受け入れに際しての経済負担も含まれている。今回、オーストリアで移民反対を訴える右派政党が政権を取ることにはならなかったが、移民に対する不満が大きくなっているのは事実だ。グローバル化とは逆のナショナリズム(アンチ・グローバリズム)が台頭していると指摘する声も多い。かといって、EU各国が移民排斥でまとまるのも望ましくない。

EU全体の没落を防ぐためにも、大量の移民が住処を見つけて人生を再建するためにも、各国が独立自尊の精神を持って、自国を豊かにしていくマインド・シフトが必要となっている。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『理想国家日本の条件』 大川隆法著

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