政府はこのほど、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理費の総額が、21.5兆円余りに膨らむ見通しを示した。

当初の見積もりは、廃炉費用が2兆円、風評被害などの賠償費用が5兆円、除染費用が4兆円だった。新たな発表では、廃炉費用は8兆円、賠償費用は8兆円、除染費用は6兆円弱にそれぞれ増大することが判明し、このうち、政府が2兆円を負担することになるという。

巨額の費用に膨れ上がった事故処理費。「いったい誰が反省すべきかと言えば、原子力事業を開始して以来の政府であり、事故のリスクを甘く見ていた電力会社である」(12月12日付ウェブサイト「スマートジャパン」)とあるように、政府と東電がすべて悪いという言論が根強くある。

無駄な除染に6兆円を投下

確かに、事故を起こしたのは東電であるが、その後の損失を拡大させた責任は、マスコミにもあるのではないか。福島が安全であることは、科学的に決着しており、それを報じる責務があるのに報じていないからだ。

福島が安全である一例を挙げると、原子力事故を調査した国連科学者委員会が2014年に、「福島での被ばくによるがんの増加は予想されない」「最も高い被ばく線量を受けた小児の集団においては、甲状腺がんのリスクが増加する可能性が理論的にあり得る」などと、国連の正式見解を発表している。

除染作業についても、福島の放射線量は人体に影響がない水準であり、6兆円もの国費を投じて除染すること自体、無駄であると言える。

不安と言えば何でもアリ?

それでもマスコミは、一部被災者の心理的な不安の声ばかりを取り上げ、国民の不安を煽りたてている。こうした報道姿勢は、安保法案やオスプレイにも見られたものであり、実は、慰安婦問題にも当てはまる。

慰安婦問題はもともと、日本軍が女性狩りをしたか否かの歴史的事実が発端だった。しかし、後に、この事実がないことが歴史的に証明されると、左翼系のマスコミは、慰安婦の主観的な主張を取り上げることに重きを置き、事の問題を人権論にすり替えた経緯がある。

今回のケースでは、偏向報道が風評被害や除染などの目に見える形となって顕在化し、結局、国民が負担しなければならなくなった。マスコミが正しい情報を伝えていれば、21兆円もの巨費に膨れ上がらなかっただろう。

(山本慧)

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