環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案が4日、衆院TPP特別委員会で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決された。与党は、8日に衆院通過を目指す方針だ。

与党が強行に採決したとして、民進党などは「強引でルール無視だ」などと激しく反発している。

今回、与党が採決に踏み切った背景には、アメリカ大統領選を戦う候補者2人が、いずれもTPPに反対していることを踏まえ、オバマ大統領の任期中に批准するよう促すためと見られている。

オバマ氏は、今月8日の大統領選の投開票後も、来年1月の新大統領就任までは、大統領の任期が続く。このいわゆる「レームダック(死に体)期間」に、議会承認を得たい考えだと見られているが、米議会でTPP発効に必要な承認を得られる見通しは立っていない。

しかし、アメリカがTPPを批准しなければ、覇権の拡大を狙う中国が、アメリカに代わって国際社会における貿易の主導権を握ってしまう。

アメリカがTPPを離脱すれば、大きな戦争が起きる!?

大川隆法・幸福の科学総裁は10月の法話で、アメリカがTPPから離脱する危険性について、こう指摘している。

アメリカがTPPを主導しなければ、まったく意味がありません。(中略)国際連盟も、アメリカが主唱しながら、実際には入らなかったことが、大きな戦争を呼び込みました。アメリカが孤立主義を取れば、世界で正しさを判定するところがなくなる可能性が極めて強い

1919年当時、「外国の紛争に巻き込まれたくない」というモンロー主義(孤立主義)にこだわる米議会は、ウィルソン米大統領が提唱した国際連盟への加盟に反対し、上院で否決した。アメリカなどの大国が不参加だったことに加え、独自の軍事力を持たず、議決方式が全会一致だった国際連盟は、その後、第二次大戦の勃発を防げなかった。

その教訓を踏まえると、事実上の「中国包囲網」であるTPPからアメリカが離脱すれば、その後、アジア地域で覇権を拡大させる中国の暴走を止められなくなる可能性は高い。

中国は現在、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などを通した経済援助で、アジア・オセアニア地域への影響力を強めている。TPP加盟国には、ベトナム、マレーシア、シンガポール、オーストラリアなど、中国が関係強化を狙っている国が多い。

日本はこうした国々との関係を強化し、アジアの安全を脅かす中国を封じ込めることが不可欠だ。世界的な混乱を未然に防ぐためにも、アメリカにTPPを批准するよう、日本は説得する必要がある。

TPPの経済効果は約14兆円という試算も

TPPについて、日本のマスコミはネガティブな報道を繰り返している。

しかし、政府が2015年末に発表した試算によると、TPPで関税の削減や投資のルールが明確化されることで、貿易や投資が拡大し、GDPが約14兆円増えるという。労働者の実質賃金が上昇し、海外からの投資が増えて、新たに約80万人の雇用が生まれるとも試算されている。

一方で、TPPによって輸入品が増え、値崩れすることによって、国内農業の生産額は最大で年間2100億円減少する可能性もある。しかし、日本の農作物は海外で高く評価されており、TPPは海外への販路拡大のチャンスと捉えるべきだろう。

日本の製品を海外に輸出する企業にとっても、関税がなくなれば価格競争力が高まる。日本の農家がこれからの時代を生き残っていくには、海外の農作物に負けない高付加価値の作物づくりや、「輸出できる農業」に成長していくイノベーションが必要だ。

(小林真由美)

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