政府・与党はこのほど、20階建て以上のタワーマンションについて、高層階の固定資産税と相続税の引き上げを検討していることを発表した。対象は、2018年以降に引き渡す新築物件になる見通し。

タワーマンションの高層階は展望がよく、値段が高い。一方で、部屋の大きさが同じであれば、原則、固定資産税と相続税は、低層階と同じ額である。子や孫に現金を相続するよりも、高層マンションの部屋を買った方が相続税額の割合は安くなるため、節税対策として、富裕層が高層階の部屋を購入する動きがあるという。

そのため総務省は、タワーマンションの高層階には増税を、低層階には減税を行うことを検討している。これは、事実上の「富裕層への増税」と言えるだろう。

海外の資産にも課税の手が伸びつつある

また、日本人が持つ海外の資産にも、これまでかからなかった相続税がかかるようになりそうだ。

現在は、資産を渡す人と受け取る人がともに海外に5年以上住んでいれば、海外の資産には日本の相続税はかからない。そのため、富裕層は税率の低いシンガポールなどで5年以上滞在し、節税していた。

こうした節税を狙い撃ちしようと、財務省は、日本国籍の保有者や海外での滞在が10年未満の人には、海外資産にも相続税をかけることを検討している(21日付日経新聞朝刊)。

富裕層をつくる「規制緩和」を

もちろん、脱税は犯罪であり、取り締まる必要がある。だが、さまざまな努力を積み重ねて築いた財産を、政府のさじ加減ひとつで課税の対象にされてしまう人々は、どのような思いを抱いているだろうか。

また、政府は、富裕層への課税を強化しているが、ここには、富裕層に対する潜在的な国民の嫉妬を利用し、税金を取れるところから取ってしまえばいい、という思惑があるのではないか。

しかし、富裕層から財産をむしり取って、それを国民に撒き続ければ、努力して金持ちになろうとする人がいなくなってしまう。結局、実現するのは「貧しさの平等」でしかない。いま、政府が目指すべきは、富裕層への課税強化でなく、日本に多くの富裕層をつくるための「規制緩和」である。

例えば、「フラットタックス」の導入。フラットタックスとは、所得の違いにかかわらず、税率を一律にする税制のこと。ロシアではプーチン大統領が2001年、個人所得税率を一律13%にするフラットタックスを導入し、税収を大幅に増やした実績がある。

また、相続税・贈与税の廃止も必要だろう。相続税や贈与税は、それまでに所得税などとしてさんざん税金を収めつつ築いてきた財産から、さらに課税される"二重課税"で、もともと不要な税制と言える。

「規制強化」は日本から金持ちを消し、「規制緩和」は日本に新たな金持ちを創る。

(山本泉)

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