図1(糺す会の資料を基に、編集部が作成)

今月23日に投開票を控える東京10区と福岡6区の衆院の補欠選挙で、偏向報道が行われているとして、「選挙報道を糺す会」(以下、糺す会)の松井妙子会長らは14日、総務省を訪れ、高市早苗・総務相宛てに、公正な報道の指導を求める陳情書を提出した。

糺す会は、放送倫理・番組向上機構(BPO)やテレビ各局に対しても、陳情書を送った。

東京10区で、報道時間はたったの8%。討論にも参加させない

東京10区からは、若狭勝氏(自民党)、鈴木庸介氏(民進党)、吉井利光氏(幸福実現党)の3人が立候補。福岡6区からは、鳩山二郎氏(自民党系無所属)、蔵内謙氏(自民党系無所属)、新井富美子氏(民進党)、西原忠弘氏(幸福実現党)の4人が立候補している。

だが、テレビ各局は、「自民党vs.民進党」という対立の構図をつくって、連日、報道している。

東京10区においては、若狭・鈴木両氏の政策や活動を詳しく報じる一方、吉井氏については短く触れるだけ。糺す会の調査によると、告示日から2日間のテレビ局の報道時間は、若狭氏が45%、鈴木氏が47%に対し、吉井氏はわずか8%だった(図1)。

他にも、BSフジは、13日放送の公開討論番組に、若狭氏と鈴木氏のみを招き、吉井氏を参加させなかった。

こうした報道は、暗に「この2人のどちらかを選んでください」と、視聴者を誘導しており、広く情報を集めない有権者にとっては、吉井氏は存在していないことになる。とても公正な報道とは言えない。

図2:図1の基になったテレビ局別の報道状況(糺す会の資料より)

福岡6区で、報道時間は他候補の半分

福岡6区でも、同じような偏向報道が行われている。鳩山、蔵内、新井各氏に比べ、西原氏の報道時間は他候補の半分にとどまっている(図3)。

図3(糺す会の資料を基に、編集部が作成)

図4:図3の基になったテレビ局別の報道状況(糺す会の資料より)

BPOが、夏の参院選と都知事選の報道を問題視

このタイミングに合わせるように、BPOの放送倫理検証委員会は今月14日、夏の参院選と東京都知事選のテレビ報道について、審議入りすることを決めた。

視聴者から「特定の候補者に報道が集中している」との意見が相次いだため、今後、選挙報道における公平・公正の意味について、考えを示すという。

東京都知事選の偏向報道については本欄でも報じたが、選挙期間中の7月下旬、幸福実現党の七海ひろこ氏の指摘をきっかけに、候補者有志6人が、民放のテレビ4局とBPOに対し、候補者21人中3人しか報じない偏向報道を改めるよう、連名の要求書を送っていた(7月27日付本欄参照 http://the-liberty.com/article.php?item_id=11717 )。

糺す会は、この時期にも、参院選・都知事選での偏向報道について、BPOや大手マスコミ各社に陳情を行っていたが、こうした一連の抗議が、今回のBPOの審議入りにつながったと考えていいだろう。

糺す会は、今回の陳情書で、以下のように訴えている。

  • 「偏向報道」(情報操作)は、選挙戦の結果に大きな影響を与える。「偏向報道」が選挙における「国民の選択」を誘導するものであることは明らかである。
  • 選挙において、どの候補者を選ぶかは国民固有の権利であり(憲法15条1項)、秘密投票が保障され(同条4項)、本来、国民各人の自由な判断によって投票する権利が保障されている。
  • 民主政の過程に不可欠な、国民の知る権利(憲法21条1項)を侵害していることは明らかである。
  • 公職選挙法は、選挙に関する報道又は評論については、表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならないと規定する(公職選挙法151条の3但書、罰則同法235条の4第1号)。

民主主義は、政治家を選ぶ有権者に正しい情報が行き渡っていることを前提にしている。その前提を、マスコミが自ら破壊するのであれば、民主主義を守るために、その不正に気づいた国民が声を上げなければならない。

(山本泉)

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