光速を超える情報伝達は実現するのだろうか。

量子テレポーテーションを使って、数キロメートル離れた場所へ瞬時に情報を転送することに成功したと、カナダと中国の研究チームが同時に発表した。科学誌ネイチャー・フォトニクス電子版が報じた。

これまでも研究室内での成功例はあったが、今回は、環境の影響を受けやすい数キロメートルもの距離での成功だ。この技術が一歩、実用化に近づいたといえるだろう。

実用化されれば、高速で安全な通信を実現できる可能性がある。今回の結果を発表した研究チームは、「通信が格段に速くて安全な新たなインターネットを、地球規模で実現させることにつながる成果だ」とコメントしている(日本経済新聞)。

量子テレポーテーションの不思議

量子テレポーテーションは、電子や光子などの超微小な粒子(量子)の性質を利用した情報伝達の方法だ。

その性質とは、量子のペアをつくり、互いに影響を及ぼすような関係を持たせると、片方の状態を変化させた瞬間、もう片方の状態が変化するというもの。ここでいう「瞬間」は、文字通り「0秒」という意味である。

理論的には、量子テレポーテーションに距離は関係ない。つまり、数キロメートルどころか、何光年離れていても、瞬間的に情報が伝わる(さすがに現在の実験ではここまでは確かめられないが)。

これはとても不思議な現象だ。なぜなら、普通、情報を伝えるには、電波や音が、ある地点から別の地点に飛んでいく(伝わっていく)必要があるが、量子テレポーテーションの場合はそうした媒体を必要としない。もし何らかの粒子が量子と量子の間を飛んで行って情報を伝えているなら、その粒子は光速を超えていることになり、現在の理論では説明がつかない。

現在、量子力学において、この現象は理論でも実験でも確かめられている。しかし、なぜ距離を超えて瞬時に情報が伝わるのかは、私たちの日常生活の感覚からは理解不能だ。超微小な量子の世界は、もしかしたら、霊などの目には見えない未知の世界と密接に関係しているのかもしれない。

(大塚紘子)

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