政府は16日、今年度の補正予算案を編成する方針を明らかにした。その中心は待機児童を解消するための対策。総額は、昨年度の補正予算3兆3千億円を上回る5兆円規模になる模様だ。

この背景には、経済の低迷がある。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)はマイナス成長で、今年に入ってからも芳しくない。そのため財政政策の一環として、子育て世代の支援を行うという。

民間企業の参入を阻む障壁

もちろん、女性たちが子育てと仕事を両立できる環境をつくることは重要だ。だが、それは多額の税金の投入でなく、民間企業のサービスによって成し遂げるべきだ。

今のところ、保育事業に対する民間企業の参入は思うように進んでいない。2001年に規制が緩和され、株式会社も保育園を運営できるようになった。だが、法人が運営するもののうち、社会福祉法人が運営する保育園が約93%を占め、株式会社が運営しているのは約3%にすぎない(昨年11月時点 東京商工リサーチ調べ)。

これは、株式会社にとって参入障壁があるためだ。社会福祉法人は、収益事業に関わる所得以外は非課税で、保育園の整備には補助金が出る。一方、株式会社は法人税や道府県税、固定資産税などがかかり、施設の整備に補助金も出ない。

こうした優遇措置によって、社会福祉法人の保育園は安い料金でよいサービスを提供できる。そうした措置のない株式会社による保育園は料金設定上ハンデを背負っており、参入がしにくくなっている。

保育を新たな成長産業に

待機児童をなくすためには、自由競争の中で、「適正価格」で良質なサービスを提供できる保育園を増やすことが重要だ。そのためには、過剰な税金の投入を止め、株式会社が完全に自由に保育事業に参入できるようにするべきだ。

そのための方法の一つが、規制緩和。現在、保育士や施設の基準には規制があるが、例えば東京都や横浜市では、独自にこれらの基準を緩和し、保育施設を増やしている。

また、待機児童が出る背景には、「女性も働かなければ生活していけない」という経済状況もある。景気が良くなり、夫の収入だけで食べていけるようになれば、子育てに専念したいと思う女性も増える。

バラマキは国の経済を疲弊させるだけ。日本経済をよくするためにも、政府は、保育を「福祉」と考え、税金を使って保育所の面倒をみようとするべきではない。企業が新たな保育サービスを生み出し、成長産業としていけるよう、方針を変えるべきだ。

(山本泉)

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