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東日本大震災からちょうど5年が近づくなか、各紙が震災復興に関する記事を掲載した。

毎日新聞「子のがん『多発』見解二分」

福島で子供の甲状腺がんやがんの疑いがある患者が166人発見されたことについて、毎日新聞は7日付朝刊で、「被ばくの影響」とする説と、「過剰診断である」という説を掲載した。

過剰診断とは、通常以上の規模で入念な検査を行ったために、通常ならば発見されない無害ながんまで発見しているのではないかという懸念のこと。福島県では震災後、福島第一原発の事故当時18歳以下だった子供全員を対象に甲状腺がんの検査を行っており、約30万人が検査を受けている。

被ばくの影響か否かは、他地域で同規模の検査をすればはっきりするという。ただ、自覚症状がない子供数十万人を対象に甲状腺がんの検査をすることは現実的ではなく、過去にも例がない。

がんの疑いとされた子供の多くを診察した福島県立医大では97人を手術したが、同大学の鈴木真一教授は同紙のインタビューに対し、「現時点で放射線の影響は考えにくい」と答えている。

読売新聞「放射線を正しく理解したい」

また、同日付読売新聞は朝刊の社説で「20ミリシーベルト以下は恐れなくていいと政府は丁寧に説明すべき」と指摘。同紙は2013年9月にも、同様の趣旨で「福島の除染計画『1ミリ・シーベルト』への拘りを捨てたい」と報じていた。

現在、原発事故の影響で行われている除染は、年間被ばく線量を1ミリシーベルトにすることを目指して行われている。しかし、政府は年間20ミリシーベルト以下を避難解除の目安としており、1ミリシーベルトは長期的な目標に過ぎない。実際に、国際放射線防護委員会(ICRP)などは、100ミリシーベルト以下であれば健康への影響は検出できないとしている。

朝日新聞「仮設住める限りは」

朝日新聞は同日付朝刊で、「解消できない仮設住宅暮らし」の問題を指摘。特に、経済問題や高齢者の健康問題が、仮設住まいの長期化のネックとしてあげられている。

福島県から県外に自主避難している住民は現在、民間賃貸住宅の無償提供を受けているが、1年後には打ち切りとなる。紙面では、「無料で住める限り住みたい」との声が紹介された。

同紙は、阪神大震災の事例を上げ、仮設住宅解消のために、公営住宅や民間の賃貸住宅をあっせんしたり、ボランティアによる引っ越しの支援、生活保護の申請などを促した事例を紹介。当時の県幹部の「長引く仮設住宅暮らしで、家賃ゼロが前提の家計になった人が多く、恒久的な住宅に移る気力を失っていた」という証言も掲載した。

本当のリスクは放射線か?

被災地においては、「放射線の影響の大小」や「避難の長期化によるリスク」についても目が向けられ始めている。実際には、福島第一原発事故において放射線の直接の影響で命を落とした人はいない。一方で、避難によるストレスや将来への絶望などで亡くなったり、自ら命を絶ってしまった人がいる。

ただでさえ、労働生産人口の減少や税収の減少に悩まされている地方自治体が、さらなる人口減と終わりなき補償に圧迫される政策を取ることは現実的ではない。

これ以上先延ばしすると、どんどん帰還は非現実的なものとなってしまう。1ミリシーベルトという基準の見直し、除染の必要性の再考など、もといた地域に住み、生活していくために必要な支援を推し進めたい。

(河本晴恵)

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