豪シドニーのプリンス・オブ・ウェールズ大学がこのほど、3Dプリンターを使って、世界初の脊椎骨移植手術に成功し、話題になっている。

脊椎骨とは、背骨を構成する個々の骨。患者は、頭蓋骨を支える脊椎骨の最上位部に腫瘍が発生していた。脳につながる神経が圧迫されたことにより、首を回せないほどひどい状態だったという。

従来の手術ですべての腫瘍を取り除くのは困難と判断した医師らは、3Dプリンターを利用することを決断した。豪の医療メーカーAnatomicsの協力の下、チタン製の骨を作り上げ、患者に移植した。

手術は無事に成功し、患者は快方に向かっているという。

3Dプリンターで個人が「メーカー」になる?

医療分野をはじめとし、3Dプリンターは新たな産業革命を起こす、と期待する声は多い。

例えば、自動車業界では、金型に代わる部品の製造機器として3Dプリンターが使われている。米Local Motorsは昨年1月のデトロイトモーターショーで、車体のほぼすべてが3Dプリンターで作成された、電気自動車「Strati」を披露している。今後自動車は、工作機械による「制作品」から、「印刷物」へと変わっていくのだろうか。

食品業界も大きく変わりつつある。

スペインのNatural Machinesが開発した3Dフードプリンター「Foodini」は、パスタやチョコレートなどあらゆる食べ物を「印刷」できる優れ物。スペイン・バルセロナのミシュラン2つ星レストランは、Foodiniを使ったお菓子開発に挑戦しているという。

アメリカではNASAが3Dプリンターでピザをつくる会社に出資し、宇宙食への利用可能性を探っている。

3Dプリンターは、短時間かつ低コストで、高精度なモノづくりを実現させる可能を秘めている。一家に一台普及すれば、家に居ながらモノづくりができるようになり、消費者が製造者になる未来も考えられる。「メーカー」「外食」の定義が変わっていく日も近いのかもしれない。

武器使用の最後の歯止めは倫理観や良心

一方で、3Dプリンターにはブランド品の偽物がつくられるなどの問題点もある。中でも特に気をつけたいのは、武器を製造し使うことだ。

国内でも2014年、神奈川県の大学職員が3Dプリンターで拳銃を制作し所持していたことで、銃刀法違反で逮捕された。このニュースは銃規制で揺れるアメリカでも話題になった。

新技術には、こうした問題はつきもの。ただ、注意したいのは3Dプリンターなどの科学技術自体は価値中立なものであることだ。技術を使う側の人間の倫理観や良心が、武器使用の最後の歯止めとなるだろう。科学技術の発展には、善悪の価値判断基準となる宗教的価値観がベースになければならない。

(冨野勝寛)

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