台湾独立志向の民進党を率いる蔡英文(さい・えいぶん)氏が、16日に行われた総統選挙に勝利し、初の女性総統になる。同時に投開票された立法院(国会)選挙でも、民進党の議席が過半数を超える勢いだ。
選挙の勝敗を分けたのは、各党の対中政策だ。台湾の国内総生産(GDP)に対する輸出依存度は6割を占め、その最大の輸出先が中国だからだ。
国民党の敗因は「中国依存」
国民党の敗因は、同党の馬英九政権が進めた「過度な中国依存」。
馬政権は、「経済成長率6%以上」「失業率3%以下」といった目標を掲げ、中国との自由貿易を拡大することで、経済成長しようとした。しかし、中国との関係が改善しても、むしろ、最近の中国経済の悪化を受け、さらなる景気悪化が懸念されている。
その影響を最も受けているのは、2014年の平均失業率が約12%であった若者層だ。若者は、大企業が中国にすり寄れば、失業率が高止まりすることを警戒し、対中批判の急先鋒となった。それが、同年3月に立法院を占拠するなどした太陽花(ひまわり)学生運動にも示された。
民進党は「現状維持」
これに対し蔡氏は、中国との距離を一定程度とりつつ、「現状維持」の関係を保つことを掲げる。中国傾斜への歯止めを打ち出したことが、有権者の広い支持を集めた。
国民党を支持する経済界も、世論の支持率が高い蔡氏を静観するしかなかった。
中国依存脱却の鍵はTPP
とはいえ、馬政権が対中依存を進めた手前、すぐに産業構造を変えることは難しい。そのため蔡氏は、中国関係の後退ではなく、「現状維持」を訴えた。
経済政策では、新産業の創出などによる内需の拡大や、再生可能エネルギーの拡大などを掲げた。蔡氏は、台湾を一変させる特効薬を持たないものの、徐々に対中依存を減らしていくだろう。
その一手となるのが、輸出先の多様化を図れる環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の加盟だ。TPPは、経済の自由化だけでなく、対中包囲網の形成を意味している。民主主義を標榜する台湾が、参加するメリットは大きい。逆に中国は、台湾をけん制するだろうが、日米両政府は、加盟国内に対して台湾支持を説得する必要がある。
蔡総統の誕生は、日本やアメリカにとっては歓迎すべきことだ。今後の動きを見守りたい。
(山本慧)
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