上院議会で演説するポー氏(画像は Wikipedia より)。

来年5月9日に投開票されるフィリピン大統領選挙の選挙戦が熱を帯びる中、フィリピン選挙管理委員会は、支持率トップの有力候補である上院議員のグレース・ポー氏(無所属)の出馬資格を取り消したと1日、発表した。フィリピンでの在住期間が足りないためだという。ポー氏側は再審査を求める姿勢をとっている。

民間調査会社パルス・アジアの世論調査によれば、ポー氏は、39%の支持を集めており、次点のジェジョマル・ビナイ副大統領(24%)を引き離していただけに、今後に影響を与えそうだ。

フィリピン映画スターの子

ポー氏は、1968年に生まれ、生後間もない時にキリスト教の大聖堂に捨てられていた孤児だ。その後、映画界で「キング」の異名をとったフェルナンド・ポー・ジュニアが、彼女を養子にした。

抜群の知名度がある家族の一員となったポー氏は、アメリカのボストン大学卒業などを経て、2013年の上院議員選挙に立候補。この選挙でトップ当選を果たし、政治家1期目にもかかわらず、今回の大統領選に出馬していた。

「反中」のアキノ大統領路線を踏襲するか?

ポー氏は、長年懸案となっている汚職撲滅と財政再建、そして安全保障の面では、中国の軍事的台頭を見据えた国防の強化を掲げていた。これらの政策は、アキノ現大統領と同じだ。

もう一人の有力候補で、アキノ大統領が後継指名したマヌエル・ロハス前内務・自治相もアキノ現大統領と同じ路線を維持すると見られている。日米両政府は、アキノ氏の外交方針を歓迎しており、次期大統領も反中派となれば、さらに連携が強化されていくだろう。

ただ、ビナイ氏は「中国寄り」との見方があり、今回のポー氏の出馬取り消しで、次期政権の方向性が不透明になった。

フィリピン以外では、台湾で反中派が来年の総統選をリードしている。中国の近隣諸国で反中政権が増えることは重要だ。

日本は、中国の傍若無人な振る舞いをとめるために、こうした国々と外交面での連携を強化する必要がある。(山本慧)

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