来年4月から始まる、電力小売りの完全自由化が近づいてきました。

この自由化によって、家庭などへの電力の小売りに対する規制が撤廃されます。東京ガスが社名変更を検討するなど、各社着々と準備が進んでいるようです。

そもそも電力自由化とはどういったもので、私たちの生活にどう関係してくるのでしょうか。

携帯会社を選ぶ感覚で電力会社を選べる

電力自由化とは、既存の電力会社の地域独占を緩和することです。2000年からビルや工場などで部分的に行われていましたが、電気使用量の少ない一般家庭は対象からは外されていました。

今回の完全自由化により、一般家庭でも、携帯会社と自由に契約できるように、電力会社の他、ガス会社や住宅メーカーなどの異業種からも自由に選べるようになります。東京に住んでいる人は東京電力、愛知に住んでいる人は中部電力からしか買えないといったことがなくなるのです。

選べるのは電力会社だけではありません。それぞれの家計にあった料金プランやサービスも自由に選べるようになります。

このように電力の供給先の選択肢が増えることは消費者にとって良いことです。ただし、クリアしなければならない課題もあります。

電力自由化後カリフォルニアや北米で停電が発生

それは、電力の安定供給を確保できるかという点です。ここではアメリカを例に考えてみます。

アメリカでは1990年代後半から2000年にかけて、多くの州で電力が自由化されました。ただ2000年、カリフォルニア州では、翌年にかけて停電が頻発。猛暑の影響で電力需要が追いつかず、十分な電力を確保できないことが主な原因でした。

2003年にはニューヨーク州など北米で、送電を管理するシステムの障害を原因とした停電が発生。復旧するまでに29時間もかかり、地下鉄やエレベーターに人が閉じ込められるなど、大きな混乱を招きました。

カリフォルニアの電力危機以降、アメリカ国内で電力自由化の動きは停滞気味です。

化石燃料が高騰すれば電気代の上昇も

アメリカと日本では事情が違うところもありますが、アメリカで発生した問題はすべて無視できるものではありません。

日本でも、電力自由化により市場に参入する企業が増えると、その中には緊急時の余分な発電設備を持たない企業も出てくることが予想され、電力の安定供給に支障が出るリスクはあるでしょう。

また、日本の化石燃料の主な輸入先である中東の情勢が悪化すれば、原油価格が高騰することも十分に考えられます。そうなると、電力自由化しても電気料金が上がる結果になりかねません。

脱原発派の中には、電力自由化し、小売事業者が増えれば、再生可能エネルギーや火力発電などで電力を賄っていけると主張する人もいますが、現状を見てみると、厳しいと言わざるを得ません。

家庭の電気料金の負担を減らし、電力自由化後の安定供給を確保するためにも、電力自由化の前に、原発再稼働が必要です。(冨野勝寛)

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