日本の技術力の高さを証明する結果が出た。

理化学研究所は18日、スーパーコンピュータ(スパコン)のビッグデータ処理(大規模グラフ解析)性能を競う国際ランキング「Graph500」で、理研のスパコン「京」が1位になったと発表した。7月に続き、2期連続の快挙となる。

ビッグデータとは、従来の方法では記録や保管、解析が難しい複雑で巨大なデータのこと。計算に要する時間は通常のデータよりも長い。今回の受賞は、京の高度な計算能力を示すものだ。

パソコン100万台分の働きをする「京」

スパコンは、普通のコンピュータと比べて計算処理能力が非常に高いパソコンのこと。主に科学技術に関する計算に使われ、ビッグデータなど、通常のコンピュータの処理能力を超える計算を、短時間で行うことができる。

特に「京」は、1秒間に1京(1兆の1万倍)という驚異的なスピードで計算する。

これは、地球の全人口70億人が1秒に1回のペースで、24時間不眠不休で計算を行い続けても、17日もかかる計算量だ。パソコンに置き換えると、実に一般的なパソコン100万台分の働きをする。

がんの治療メカニズム解明にも貢献

スパコンの応用分野は多岐に渡る。例えば、防災分野では、地震や津波が起こった際、建物の倒壊、津波の規模や方向を精密に予測。スマートフォンなどの通信機器を通じて、最適な避難経路を伝える。

医療分野ではすでに成果が上がり始めている。東京大学の研究グループは、京を使って患者の心臓の動きを再現。薬の副作用の影響、病気の詳しいメカニズムを明らかにした。

その他、分子の動きを細かい動きも計算でき、ウィルスの詳しい構造、がんの治療メカニズムの解明など、新薬・新医療技術の開発も進んでいる。

このように、スパコンは、あらゆる産業の技術革新の基盤となるものだ。

「『1位が1台』と『2位が10台』、どっちが有効か」

産業の技術革新の基盤とも言えるスパコン。そんな「未来技術」がかつて、事業仕分けの対象に挙げられていたことを覚えている人も多いだろう。

2009年の民主党政権下で、事業仕分けを進めていた蓮舫行政刷新担当相は、京について「世界一になる理由は何かあるんでしょうか?2位じゃダメなんでしょうか?」と指摘。予算凍結は回避されたものの、京は40億円の予算削減という憂き目にあった。

この流れは自民党になっても変わらないのか。

河野太郎・行政改革相は京の次世代機について「『1位が1台』と『2位が10台』、どっちが有効か」と、文部科学省を繰り返し批判している。この問い自体、優れた技術に投資することの価値がまったく分かっていないと言わざるを得ない。

「縮み思考」から脱却し「発展思考」へ

予算の無駄を省くことは確かに大切なことだ。しかしそうした“努力"が行き過ぎた結果、本来生み出されるはずだった富が失われてしまってはあまりにも悲しい。

スパコンなどの最先端技術の研究開発費は、「浪費」ではなく「投資」なのだ。

そうこうしているうちに、スパコンは過去のものになるかもしれない。

現在、スパコンの研究と並行して、スパコンが数千年かかる計算をわずか数秒で計算できる、量子コンピュータの研究が進んでいる。科学技術は日夜進化しており、1位を目指す気概がなければ、他国に技術で先を越され、2位、3位さえもなれない。国力の衰退にもつながってしまう。

今、国に必要なのは無駄を削ろうとする「縮み思考」ではない。科学者や研究者の智慧や努力を生かし、未来科学の芽を育てる「発展思考」だ。(冨野勝寛)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『未来への国家戦略』大川隆法著

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