米テスラ・モーターズ社のCEOイーロン・マスク氏がこのほど、米コメディアンのスティーヴン・コルベア氏が司会を務めるお笑い番組「ザ・レイト・ショー」に出演した。
この番組は、俳優やコメディアン以外にも、バイデン副大統領やマスク氏など、政治家や実業家などもゲストに迎え、笑いを交えながら、視聴者が気になっていることやゲストが関心を持っていることについてインタビューするトークショーだ。
そこでマスク氏は、いま興味を持っているという火星移住計画について言及した。
火星を人類に適した惑星に変える
「火星移住」と言うと、一般的には「夢物語」と考えるかもしれない。しかし、マスク氏は100万人規模の移住を考えており、そのためには、火星そのものを「暖めて」人類の生存に適した環境に変える必要があるという。
火星の気温は摂氏マイナス140度から35度ほどの範囲で変動し、地球より格段に寒い。マスク氏は、火星を暖めるために、「惑星の両極に熱核兵器を落とせばいい」と話した。
司会も面食らった発言だが、なぜ火星の北極や南極に熱核兵器を落とすことが惑星の温暖化につながるのだろうか。
実は、火星の両極には大量の二酸化炭素が眠っており、これらを放出すれば、温室効果で惑星を暖めることができるのだという。火星の大気の約96%はすでに二酸化炭素でできているが、密度が低いために、両極に眠っているガスを放出する必要があるのだ。
もちろん、マスク氏の提言に対して懐疑的な声も出ている。「二酸化炭素を開放しても、すぐに再凍結する」「埃が多い火星の大気だと、放射線物質が散乱しやすい」などとし、「核兵器よりは、隕石を両極にぶつけたほうがいい」とする主張もある。
火星の有人飛行は実現するのか?
実は、火星移住計画は単なる夢物語ではない。
現段階におけるNASAの見通しでは、2035年までに火星に有人飛行船を送る予定だ。そのために、4人乗りのオリオン宇宙船を開発中である。
もちろん、火星に行くために必要なものは、マスク氏の言う「暖かい環境」だけではない。大量の酸素や強力なエンジンも必要だ。
そのため、2020年には次世代のローバー(火星探査車)が、火星の二酸化炭素を酸素に変換する機器とともに送り込まれる予定だ。
また、20年代には、NASAが地球付近の小さな隕石を探し出し、無人機でこれを捕まえて月の衛星軌道上に乗せる計画がある。これは、火星探査のために必要な技術をテストするとともに、有人飛行船を送って隕石を調査しようという試みだ。
既存の技術でも、火星の有人探査は手が届くところまで来ている。しかし、広大な宇宙を探査するには、さらなる技術力の向上が求められる。
マスク氏の案が現実的かどうかは分からないが、この先、宇宙開発を飛躍的に推し進めるには、彼のように奇抜なアイデアを持った人材が欠かせない。(中)
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