中国政府系の台湾専門家である朱衛東氏が、中国共産党内での情勢報告で、来年1月の台湾の総統選で、独立志向の強い民進党が政権を奪還すると結論づけた。このほど産経新聞などが報じた。

記事では、朱氏は報告で、昨年11月の台湾地方選で、中国寄りの国民党が大敗したことから、来年1月の総統選でも国民党の洪秀柱・総統候補が負けると分析し、「人気のない二軍的な存在」と評したと紹介。民進党が政権を奪還した際は、「経済・貿易関係を軸に揺さぶる」よう提言しているという。

通常中国政府は、公式に台湾の総統選について論評しないため、今回は異例なもの。民進党が優勢になっている台湾の人々の動揺を狙ったと見られる。

中国は他にも、総統選を前に、台湾に次々と"メッセージ"を送っている。

昨年の台湾地方選後には、退役軍人が北京のシンポジウムで「今後は台湾問題で軍事的なオプションもありうる」と発言。今年7月には、中国国営テレビで、人民解放軍の軍事訓練の様子が放送され、台湾の総統府に極めて似た建物に歩いていく兵士の姿が写された。台湾への上陸作戦を想定した訓練と見られ、中国は武力併合を計画していると、台湾で波紋を呼んだ。

同じく7月に制定された中国の国家安全法では、国家主権と領土を守ることなどについて、一方的に台湾に遵守を求めている。

ただ、朱氏が指摘するように、民進党が政権を奪取した場合、台湾とアメリカが協力して南シナ海の防衛を強化したり、日本が尖閣諸島の防衛を強化しやすくなることも予想される。

来年の総統選で民進党が勝利した場合、中国から経済面や軍事面で、さまざまな形で圧力が加えられることが予想されるが、これを台湾だけでしのぐことは難しいだろう。台湾が中国に組み込まれてしまえば、台湾の人々の言論の自由や信教の自由をはじめとする様々な自由が奪われる。

中国が台湾を手に入れた場合、次に狙うのは沖縄だろう。つまり、台湾を守ることは、日本を守ることにもつながる。

現在、台湾経済は、約半分程度を中国に依存していると言われる。日本は、FTAや日台関係法の議論を前に進め、「日本は台湾を支える」というメッセージを送り続けるべきだ。また、日本が現在審議を進めている安保法制を成立させ、台湾の人々が選挙に際して無用な恐怖心に囚われることから解放すべきだろう。

中国の脅威に怯える台湾に対し、大国である日本は、経済面や軍事面で関係を深めていき、東アジア全体を安定させていく義務がある。(居)

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