ロシアのメドベージェフ首相が22日、北方領土の択捉島を訪問したことに対し、日本政府が抗議している。

プーチン露大統領の年内来日を目指し、岸田文雄外相が8月末に訪露する予定で政府は調整を進めていたが、延期する方針を固めた他、アファナシエフ駐日ロシア大使に対し、岸田外相が抗議した。メドベージェフ首相の択捉島訪問計画に対しては、菅義偉官房長官が21日の記者会見で、「絶対に受け入れられない」と強く牽制していた。

ロシアは日本と仲良くしたい?

「せっかく日露関係がよくなりそうだったのに、なぜこのタイミングでわざわざ首相が北方領土に行くの?」というのが、多くの日本人の感覚だろう。

メドベージェフ首相は、現地で記者団に「日本とは仲良くしたい。日本は隣人だ。対日関係は良好だ。しかしそれはいかなる形でもクリル諸島(千島列島)の問題と結びつけられてはならない」(Sputnik日本)と語った。また、択捉島を含むクリル諸島の開発について、中国や韓国のほか日本に対しても投資を呼びかけた。

日本人の感覚からすると、「日本と仲良くしたい」「日本にも投資してほしい」という言葉が本気なのかどうか疑わしく聞こえてしまう。しかし、本気ではないと断じる前に、日本とロシアの感覚の違いを知っておくべきだろう。

北方領土に対する認識が違う

そのひとつは、北方領土についての感覚だ。日露ではこの認識が全く違う。

日本人からすれば、北方領土は「日本がすでに降伏しているにもかかわらず、ソ連が攻めて来て奪い取った土地」であり、日本の領土をロシアが実効支配しているという認識だ。しかしロシア人にとって北方領土は、「第二次世界大戦で戦って勝ち取った土地」であり、先祖の犠牲の上に自分たちの土地になったという認識がある。

日本もロシアもこうした互いの認識を理解しなければ、解決は見えてこないだろう。

領土問題に対する感覚が違う

領土問題についての感覚の違いも、交渉が進まない大きな原因となっている。

ロシアに詳しいジャーナリストの石郷岡建(いしごおか・けん)氏は、本誌2014年7月号の取材に対し、「ロシアのような大陸国家は、隣接する国と交流しながら、物事を決めるための戦略を考える。一方、日本のような海洋国家は、なるべく距離を置こうとする」と、日露の領土問題に対する感覚の違いを説明している。

地続きで他国と国境を接していれば、何か一つの問題が決裂したからと言って交渉を断つわけにはいかない。要求をしたり譲歩したりをくり返しながら、着地点を見出していくことになる。そうした感覚からすれば、ロシアは本気で「日本と仲良くしたい」と思いながら、日本人からすればそうは見えない行動をとることもあるだろう。

今、日本にとって警戒しなければならないのは、覇権を強める中国とロシアが軍事的に一体になることだ。すでにクリミア問題で欧米の経済制裁に苦しむロシアは、中国と接近している。中露vs.日米の対立という事態を防ぐためにも、日露関係改善の道を模索していかなければならない。(紘)

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