本欄のポイント

  • 2022五輪開催地選定の最終審議に残った二カ国は独裁国家
  • 雪が降らない2022年冬季北京オリンピック
  • 民主主義国家は「金食い虫」のオリンピックを開催したがらない。
  • IOCには、オリンピックのためのインフラ工事が無駄にならない知恵が必要

2022年冬季オリンピックの開催地としてこのほど、北京が選ばれた。

最終的な候補地は中国・北京と、カザフスタンの大都市の一つであるアルマトイとなり、国際オリンピック委員会(IOC)は最終的に前者を選んだ。

人権問題を無視したIOC

今回の選択に対して、欧米メディアには否定的な見解が見られる。中国やカザフスタンはいずれも独裁国家であり、激しい人権弾圧の下で国民は苦しんでいる。

このように、人権問題を抱える二国に選択肢を絞らざるを得なかったIOCに対しても批判が出ており、オリンピック開催地の選定制度の改革の必要性を訴える声もある。

北京で雪は降らない

問題は人権だけではない。北京が開催地として立候補した際に、IOCが指摘した致命的な問題として、「北京では雪が降らない」ことが挙げられる。オリンピックのスキー競技は、北京から北西160キロの地点で、ゴビ砂漠の淵にある張家口市で行われる予定だ。

そこでも、年間積雪量は平均5cmほどで、スキー競技に適していないため、人口雪に頼ることになる。しかし、「冬季オリンピックは本物の雪の上でやりたい」というのが、見る側や参加する選手の本音だろう。

民主国家がオリンピックを開催したがらない理由

これらの問題がありながら、北京やアルマトイが最終候補となったのはなぜだろうか。

それは、結局「お金」の問題だ。中国やカザフスタンとともに2022年冬季オリンピックの開催候補地であったノルウェーやスウェーデンは、オリンピックを開催するコストを見た後、候補地の立場を退いている。

民主主義国家において、スタジアムやその他インフラを何千億円もかけて建てることを、国民に納得させるのが難しくなってきているのだ。

実際、2004年のアテネオリンピックのために建設されたスタジアムは、いまや雑草が生い茂る廃墟のようになっている。

そのため、「国民の声」を考慮せずにお金を使える独裁国家が有利となり、今回の選定結果につながった。

オリンピック開催地の選定制度は改革が必要

実際、中国やカザフスタンなど、人権弾圧が横行する独裁国家しかオリンピックを開催したがらないのであれば、IOCにとって恥ずかしいことだ。

人権を尊重する国でオリンピックを開催するには、オリンピック開催に「経営の智恵」を入れる必要がある。

そのためには、インフラ工事を長期的な都市計画に添わせることや、地元のスポーツクラブや国家的な行事として後々使えるようなスタジアムをつくるなどの工夫が必要だ。場合によっては既存のスタジアムやインフラをリノベーションしてコストを抑えることも視野に入ってくる。

オリンピックには、もちろん「国威発揚」としての意義があり、"景気のいい"開発が期待される。しかし、一時の「インフラ景気」で終らないように、長期的な採算につながる智恵を模索しなければならない。(中)

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