《本記事のポイント》

  • バイデン大統領は米憲法の精神についての理解が足りない?
  • 6月1日「Xデー」の信憑性はない
  • 市場が突き付ける政権への審判

米連邦政府の「債務上限」を巡るバイデン政権と野党共和党の攻防が続いている。この問題の対応に追われ、バイデン大統領は主要7カ国首脳会議(G7サミット)後、予定していたオーストラリアの訪問をキャンセルし、帰国を前倒しすることになった。

現在、下院の多数派を占める共和党は4月下旬に、条件付きで1.5兆ドル債務上限を引き上げる法案「Limit, Save and Grow Act(政府の支出を制限し、納税者のお金を貯め、経済を成長させる法)」を可決している。

この法案は、2024年会計年度の支出を22年度の水準に戻し、予算増額幅も毎年1%に抑え、今後10年で4.8兆ドルの節約をすることを要求。またインフレ抑制法に含まれていた電気自動車の購入補助や、法廷で争われている学生ローンの免除の撤廃、福祉の需給条件に就労条件を義務づけることを求めている。

両者は合意に向けて最終調整に入っているが、もし合意ができず米国債がデフォルトになった場合、その影響はアメリカ国内に留まらず、世界的な金融危機の引き金を引く恐れもある。

バイデン大統領は、米憲法の精神についての理解が足りない?

当初バイデン政権は無条件で債務上限の引き上げに応じるよう、共和党下院議長に求めていたのもあって、ジャネット・イエレン米財務長官は15日にも、債務上限を引き上げなければ6月1日にデフォルトすると、警告を発していた。政府支出削減とセットでなければ、債務上限を引き上げないとする共和党はまるで"国を崩壊させるテロリスト"のように扱われてきた。

だがこのバイデン政権側の姿勢は、アメリカ憲法の精神に対する理解が十分ではないようだ。

三権分立が徹底されているアメリカでは、議会は「財布の紐」を握っている。大統領でも、裁判所でもなく、憲法は議会にお財布を委ねている。

当初は、議会が国債を発行する度に承認を与える形をとっていた。それが1917年以降に、財務省が一定の上限まで債務を発行する形の債務上限を管理するモデルに移行したのである。それでも、政府が発行できる債務の額や種類について制限が残っていた。

これが1939年に撤廃され、現在で行われている債務総額を設定し、財務省職員にその債務の方法を管理させるパターンに移行したのである。

つまり専制君主の出現を恐れた建国の父たちは、財務省が勝手にお金を使い込むことができないように、財布の紐を握る議会がその本来の役割を果たすべきだと、憲法に書き込んだのである。

もし予算編成のプロセスから議会を排除して、大統領が自分の好きな目的のために好きなだけお金を使う(訴訟対象となっている学生ローンはこの問題を象徴している)なら、三権分立を完全に否定するものとなる。

債務上限問題が協議される中で、「憲法自体が債務上限を禁止している」という考えも浮上した。これは憲法修正第14条第4項に基づき、政府にはプラチナコイン(*)を発行する権限があるという主張であるが、まさに今述べた三権分立を否定するものとなり悪質な憲法解釈だと言える。

大統領が債務上限を超えて一方的に発行する債務が、憲法14条4項で定める「法律で認められたもの」とは考えにくく、オバマ政権下の憲法担当の法律顧問も重大な懸念を抱いていた。

憲法14条4項の判断は最高裁判所から出されていないため、これに基づいて大統領が債務上限を無視して債務を増やした場合、多くの訴訟が提起されることになることは予想される。そのためもあり、バイデン氏は9日の協議後、メディアの質問に答え、「憲法修正14条が現在直面している問題を解決するとは思わない」と述べ、奇策に訴える選択肢を放棄したようである。

(*)政府が1兆ドルのプラチナコインを発行し、それを米連邦準備制度理事会(FRB)が買い入れれば、政府がFRBに持っている政府預金に同額が入金され、それで政府は債務を増やすことなく、歳出を行うことができるというもの。

6月1日「Xデー」の信憑性はない

では、本当に米国債はデフォルトになるのか。

実は、年金基金からの資金を振り向けるなどして帳尻を合わせることができるので、債務上限は何カ月も破られることはない。また上限に達しても、政権は支払いの優先順位をつける権限を持っているため、国債保有者の利払いは滞りなく行われる。

また予算は、会計年度ベース(10月~9月)で制定されているので、会計年度内の支出を一部、遅らせることも問題がない。

6月15日には四半期ごとの法人税収も入ってきて、国庫には余裕が生じるため、7月下旬まで「Xデー」は先送りされることになる。

市場が突き付ける政権への審判

ただ期日が迫るほど、金融市場が不安定になる可能性はある。

2011年のオバマ政権下では、債務削減案を巡って対立が激化し、債務上限に達する直前になっても合意ができなかったため、米国債がデフォルトする寸前まで行った。

格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は当時、米国債を「AAA(トリプルA)」から「AA+(ダブルAプラス)」に格下げし、金融市場は混迷を極めた。

また、今回債務が引き上げられたとしても、1年後または2年後に交渉が行われるのは必至である。その度に、米国債の格付けが揺らぎ、マーケットは揺さぶられることになる。

米銀行を発端とした銀行危機にアメリカが揺さぶられる中、債務上限引き上げがきっかけに金融が不安定になることは避けるべきだ。しかし債務残高の利払い費だけで29年に1兆ドルを超える。債務上限を無条件に引き上げて、アメリカの増え続ける債務に対処しなければ、先行きはもっと暗い未来がやってくるのだ。

次の大統領選の激選州の50%の有権者は、条件付きで債務上限を引き上げるべきだと考えている。激戦州以外に至っては、60%から80%の有権者が財政改革を求めている。再選の可能性を高めたいのであれば、バイデン氏は共和党案に妥協を示すほうが得策かもしれない。

【関連書籍】

減量の経済学.jpg

『減量の経済学』

大川隆法著 幸福の科学出版

幸福の科学出版にて購入

Amazonにて購入

「大きな政府」は国を滅ぼす.jpg

『「大きな政府」は国を滅ぼす』

アーサー・B.ラッファー 著/ザ・リバティ編集部 訳 幸福の科学出版

幸福の科学出版にて購入

Amazonにて購入

【関連記事】

2023年4月30日付本欄 トランプ支持者を「MAGA過激派」と罵ってバイデン氏は出馬表明 激戦区の有権者は共和党の政府支出の削減を支持

https://the-liberty.com/article/20593/

2023年1月29日付本欄 債務上限をめぐる問題は歴史的な対決になる 2年間で約4兆ドルを使いこんだバイデン政権は素面(しらふ)になるのか

https://the-liberty.com/article/20299/

2023年2月号 大恐慌の足音が聞こえる

https://the-liberty.com/article/20163/

2023年1月号 米中間選挙の真相とアメリカ復権への道

https://the-liberty.com/article/20069/

2022年10月号 「ポスト・バイデン」を考える 中間選挙間近のアメリカ

https://the-liberty.com/article/19815/

2022年9月13日付本欄 囁かれ始めたアメリカの日本化!「ザ・ファクト」が「ザ・リバティ」の特集を読み解く番組を制作【ザ・ファクト×The Liberty】

https://the-liberty.com/article/19871/

2022年8月号 バイデン大統領は大恐慌を招くのか

https://the-liberty.com/article/19645/

2022年7月28日付本欄 バイデン大統領は「大恐慌」を招くのか? 「ザ・リバティ」の特集を読み解く番組を「ザ・ファクト」が制作【ザ・ファクト×The Liberty】

https://the-liberty.com/article/19750/