《ニュース》

17歳以下の未成年に対する性転換治療をめぐり、アメリカで議論が激化しています。

バイデン政権が、トランスジェンダーの未成年に対するホルモン治療や性転換手術(性別適合手術)を推進する一方で、保守派は未成年の性転換治療には慎重であるべきだとし、議論が大きく二分しています。

《詳細》

アメリカでは、自身がトランスジェンダーだと思う13~17歳の子供が30万人はいるとも推定されており、何らかの性転換治療を受ける未成年が増えています。

例えば、10歳から11歳ごろの二次性徴が始まる年齢になれば、「puberty blocker」と呼ばれる二次性徴抑制剤の投与を受けることができます。しかし、この薬は十分な臨床実験を経ておらず、骨や脳の発達を阻害する危険性が指摘されるなど、投与の安全性が疑問視されていることを、米ニューヨーク・タイムズ紙も一面で報じています(11月14日付)。

加えて、未成年時にホルモン治療や性転換手術を受けたものの、その後、自身がトランスジェンダーではなかったと気づき後悔する事例も多数報告されています。

こうした深刻な状況を踏まえ、アーカンソーやテキサス、フロリダなど保守層が多い州では、子供を守るという観点から、未成年のトランスジェンダーに対する性転換治療を制限・禁止する法律の制定が進められてきました。

一連の動きに対し、「LGBTQ擁護」を強調してきたバイデン政権は、トランスジェンダーの権利を侵害する行為だと猛批判。バイデン大統領は6月、各連邦省庁にLGBTQ当事者の権利や安全を守るための行動を促す大統領令に署名し、「私たちは国の魂をかけた闘いの中にいる」と訴えました。

さらに10月、自身も男性から女性に性転換をしたトランスジェンダーの権利活動家であるディラン・マルバニーさんとの対談の中で、「州に性別適合医療を禁じる権利があるか」という問いに対し、バイデン氏は次のように答えました。

「道徳的な問題として、いかなる州も、いかなる人も、そのようなことをする権利を持つべきではありません。法律的な問題として、単純にそのような行為は間違っていると思います」

「全ての人が持つ基本的人権に関して、我々が声をあげ続けることは非常に重要です。政治の話に深入りするのは避けますが、いくつかの州で起こっている(未成年者に対する性転換治療を制限・禁止するという)考えは、常軌を逸しており、非人道的です」

しかし、米世論調査会社・トラファルガーが10月に行った世論調査では、78.7%が、未成年への二次性徴抑制剤の投与や性転換治療に反対する姿勢を示しました。

有権者の8割近くが反対しているにもかかわらず、バイデン政権が未成年への性転換治療を推進していることに対し、現実を無視した無責任な姿勢だと批判の声が上がっています。

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