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キッシンジャー元米国務長官が23日夕方(現地時間)、スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にて、オンライン形式で発言しました。その中でウクライナに対し、自国領土を割譲してでもロシアとの和平交渉の道を探るべきだと提言し、注目を集めています。

英テレグラフ紙や米ニューズ・ウィーク誌、米ワシントン・ポスト紙などが、「キッシンジャー氏がウクライナは和平のためにロシアに領土を明け渡すべきと言った」と報じました。

《詳細》

テレグラフ紙などの報道によると、キッシンジャー氏は次のように語ったとのことです。

「今後2カ月以内に、簡単に乗り越えられないような動揺や緊張を生む前に、交渉を開始すべきだ。理想的なのは、元々の境界線に戻ることだ」「それ(戦争前の境界線)以上を求めての戦争継続は、ウクライナの自由を求めるものではなく、ロシアそのものに対する新たな戦争となるだろう」

ロシアが軍事作戦を開始する以前から、ウクライナ東部のドネツクとルガンスク両州では親露派勢力が一部を支配しており、キッシンジャー氏の提言は、和平交渉のためにはウクライナ領土の一部をロシアに割譲すべきだとする意味を含んでいます。

さらにキッシンジャー氏は、ロシアが400年以上にわたって「ヨーロッパの不可欠な一部」であり、ロシアと敵対し続けることは長期的にヨーロッパの安定に悲惨な結果をもたらしかねないと指摘。西側諸国が「その場のムード」でロシアの重要性を忘れることのないよう警鐘を鳴らしました。

またウクライナに関しては、ヨーロッパの一部ではなく中立的な緩衝国であるべきだとし、「ウクライナの人々が、彼らが示した勇敢さに知恵を一致させてくれることを望む(I hope the Ukrainians will match the heroism they have shown with wisdom)」と、ウクライナ政府の外交方針に苦言を呈したとのことです。

キッシンジャー氏の発言に先立つ23日午前、ダボス会議ではウクライナのゼレンスキー大統領がオンライン形式の演説を行い、ロシアに対し最大限の制裁を科すよう要求。具体的には、ロシア産石油の輸入禁止、あらゆる銀行の国際金融からの遮断、貿易停止などを挙げ、次のように自国の窮状を訴えました。

「暴力は服従させようとする者を征服すること以外、何も求めない。本日、我々が語っているように、そしてロシアがウクライナで行っているように、暴力というのは対話などせず、殺すのだ」「まさに今年は、力によって世界が支配されるかどうかが決まる瞬間、世界の大きな転換点となっている」

「ロシアや、隣国に対して残忍な戦争を起こそうとする全ての潜在的な侵略者が、自身の行動に対する結果を明確に知ることができるよう最大限の制裁を行うべきだ」

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