《本記事のポイント》
- 広島高裁が伊方原発3号機を運転禁止に
- 「ゼロリスク」には無理がある
- 日本が無視できない「中東リスク」
広島高等裁判所は17日、愛媛県にある四国電力の伊方原発3号機の運転差し止めの仮処分を決定した。運転禁止を求めたのは、伊方原発から50キロ圏内に位置する、山口県東部の3人の住民。
伊方3号機は昨年12月から、定期検査のため運転を停止している。今年4月末に定期検査が終わり、運転を再開する予定だったが、今後の司法手続きで再稼働が認められない限り、運転を再開できない。
今回の決定に対し、四電は、異議申し立てをする方針を明らかにした。今後、広島高裁の別の裁判長による異議審が開かれる見通し。
伊方原発は、愛媛県伊方町にある四国電力で唯一の原子力発電所。3号機は、1994年から運転を始めた。東日本大震災後は、新規制での審査に合格し、2016年に再稼働した。1号機・2号機は、廃炉が決まっている。
「ゼロリスク」には無理がある
今回焦点となったのは、活断層と火山のリスクだった。
四電は、新規制による審査に合格するため、詳細な調査を実施。原子力規制委員会は、「世界最高水準」といわれる新規制で審査し、再稼働を決めた。
しかし今回、広島高裁は、四電の調査を「不十分」と一蹴。極めて厳しい原子力規制委員会の判断を誤りとし、原発の再稼働に事実上の「ゼロリスク」を求めた。
伊方原発から130キロメートル離れた阿蘇山について、「約9万年前の過去の最大噴火を想定すると、火砕流が原発の敷地に到達する可能性が十分小さいとはいえない」というものだ。
「9万年もの間、リスクがゼロであることを証明できなければ、再稼働させない」と言っている。だが、そんな要求には無理がある。
さらに、活断層や火山の動きは、学者でさえ十分に予測することができない。阪神淡路大震災や東日本大震災、阿蘇山や御嶽山の噴火などの災害を予測できていなかったことが、それを物語っている。
「ゼロリスク」と言えるものは、この世の中に存在しない。
無視できないのは「中東リスク」
四電は、伊方3号機を再稼働できない分、火力発電での代替を余儀なくされる。そのため、燃料費だけで月35億円のコスト増になるという。その負担は最終的に、各家庭に重くのしかかることになる。
また、日本は火力発電に必要な化石燃料の多くを中東から輸入している。しかしその中東では最近、イランをめぐる情勢が不安定になっている。今後、アメリカとイランが衝突すれば、日本へのエネルギー供給も不安定になるだろう。
ただでさえ、日本のエネルギー自給率は4%。「中東リスク」は無視できない。国際情勢が緊迫化する中、今回の広島高裁の判決は、全くの「逆判断」と言える。電力の安定供給のためにも、伊方原発3号機の再稼働を、一日でも早く進めるべきだ。(飯田知世)
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