米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」ホームページ。
《本記事のポイント》
- 米シンクタンク「外交政策研究所」が中国の工作活動に警鐘
- 工作員によるスパイ活動や中国人留学生のプロパガンダ活動などが挙げられた
- 日本も平和ボケを脱するべき
世界各地で中国の工作活動への危機感が高まりつつある。本欄でも、中国政府による巨大な経済圏構想「一帯一路」や、南シナ海で建設が進む軍事拠点などを取り上げてきた。
今月6日、米シンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」で上級研究員を務めるジューン・テウフェル・ドレイヤー氏は、同研究所のホームページで、中国政府による工作活動の脅威を主張した。
ドレイヤー氏は、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドや台湾を例に、中国による工作活動がいかにして世界各国に影響を及ぼしているかを述べた。工作員が政治家や高官に接近した事例を紹介している他、中国人の学生や教授が工作員として活動する実態も明らかにした。
ドレイヤー氏は、外国の大学に属している中国人の学生や学者が属する「中国学生学者連合会(CSSA)」が、中国政府の政策を諸外国に伝える最大の"導線"だと指摘している。
実際、2017年2月に米カリフォルニア大学サンディエゴ校が同年6月の卒業式にダライ・ラマ14世を招待すると発表した際、現地のCSSAは次のような声明を出している。
「ダライ・ラマ14世は単純な宗教家ではなく、長きにわたって祖国分裂を進め、民族の団結を破壊してきた政治亡命者だ」「(ダライ・ラマ14世と接触する)行為は中国に対する内政干渉であるだけでなく、同校の中国人留学生や学者の感情を大きく傷つけ、国家間にマイナスの影響をもたらすものだ」
2016年12月に中国社会科学院文献出版社から出版された「中国留学発展報告」によると、2015年時点で中国の海外留学生は126万人に達し、全世界の海外留学生総数の25%を占めた。120万人以上の学生と学者が、中国政府の手足として各国で活動しているということだ。
中国に取りこまれていく政治家
ドレイヤー氏は、オーストラリアやニュージーランドの高級官僚や国会議員が職を退いた後、中国企業での仕事に就いていることにも懸念を示している。
その例として、親中派として知られていた元オーストラリア外務大臣のボブ・カー氏が挙げられている。カー氏は退任後、「オーストラリア・チャイナ・リサーチ・インスティチュート」の委員長に就任しているが、同組織の理事長および大口献金者は、オーストラリア議員への献金問題で知られている、不動産デベロッパーの黄向墨(ファン・シャンモー)氏だ。
カー氏は、オーストラリア国内で高まる中国の工作活動への批判に対して、現地紙オーストラリアンへの寄稿で、「オーストラリアの中国系住民が中国の工作員によって抱き込まれ、誘導され得るほど単純だというのは傲慢な想定だ」と書くなど、中国擁護に熱心だ。
自国の政治家が中国政府に取りこまれる中、テロやスパイ対策を主任務とするオーストラリア保安情報機構(ASIO)の副長官のピーター・バッカリー氏は1月末、国会での喚問でこのように警鐘を鳴らした。
「オーストラリアの国益に反するスパイ活動や外国からの工作活動は、かつてない程のスケールで起こっています」「確かに冷戦は歴史の中において大変せわしない期間でした。しかしそれは、今日私たちが面している(スパイ活動や工作活動)ほどのスケールではありませんでした」
一方、9日付産経新聞によると、鳩山由紀夫・元首相が8 日、米プリンストン大学で講演し、「中国は平和的な外交政策を行う。とくに周辺国とは仲良くする」「中国は大国となっても決して覇権を求めない。歴史的にその遺伝子はない」などと述べ、中国脅威論をけん制したとのことだ。
日本も他人事ではいられない。早々に「平和ボケ」を脱する必要がある。
(片岡眞有子)
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