釈量子の志士奮迅 [第124回] - 反スパイ法改正の中国から脱出を急げ
2023.05.29
2023年7月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第124回
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/
反スパイ法改正の中国から脱出を急げ
中国がこのほど改正した「反スパイ法」が、7月から施行され、その摘発対象が拡大されます。特に今回、「スパイ行為」の定義が拡大されました。従来は「国家機密」の提供とされていましたが、新法では「国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品」の提供・収集などとされ、より曖昧かつ広範になりました。
その結果、例えばレアアースなど資源に関わる場所を「撮影」したり、政治について「雑談」をしたりするだけでも、摘発されることが十分想定されます。
特に近年は、ウイグル強制労働で作られた製品は、アメリカの制裁対象となります。外国企業はその有無を調査する必要もありますが、これも「スパイ」と見なされかねません。
現に改正法施行前から、こうした業務を代行する、欧米のコンサルタント会社・調査会社の摘発などが相次いでいます。中国は「とてもではないが普通のビジネスができない」場所になっていくと見られます。
中国に生産拠点を置くある大手企業の社員も、「当局から地図の持ち込み・持ち出しができなくなるという通達が来た。中国では地理情報は軍事機密扱いで厳しい制限がある。逮捕された日本人もいるので注意が必要」と語ります。
外交カードで"人質"拘束!?
とりわけ懸念されるのが、中国当局がその法律の曖昧さをあえて利用し、「政治目的」で恣意的に運用することです。
3月に日本のアステラス製薬の男性社員が拘束されたことは、大きな波紋を呼びました。政治関係者や業界関係者との交流に「スパイ」の嫌疑がかけられたというのが表向きの理由です。しかし本当は、日本がアメリカと足並みをそろえて「半導体製造装置の輸出規制」を行ったことに対する「外交カード」ではないか、との観測もあります。
台湾有事なども近づき、日本が今後、中国と敵対構図を強めなければならなくなる局面は増えるでしょう。そのたびに日本人駐在員が人質に取られるような状況に、このままではなりかねません。日本は政府・企業とも、これまで以上に真剣に、脱中国を急ぐべきです。
そもそも中国の言う「法の支配」は、私たちが慣れ親しんでいる西洋的な「法の支配」とは、根本的に違います。
西洋では、人々が専制政治に対抗し、自由を創設してきた長い長い歴史があります。それを経て現在、「どのような国家権力も法の下にあり、その暴走から国民は守られるべき」という考えが根付いています。
この奥には、「すべての人間は創造主から自由を与えられており、いかなる国家権力もそれを侵せない」という宗教的精神があります。
しかし中国には、そうした人権思想はありません。それどころか無神論であるため、国家権力を縛るものなどあり得ません。「法」というのはあくまで人民を支配するために利用する「道具」に過ぎず、本質は始皇帝時代の「法家思想」と変わっていないのです。
ですから日本人が中国当局に、少しでも法の"良心的な運用"を望んでいるなら、裏切られることになるでしょう。政治的理由によっていくらでも日本人が拘束されて人権が踏みにじられる。そんな不条理を目にすることになるでしょう。
国内回帰の壁は電気料金の高騰
こうした現実に少しずつ気づいている人も増えています。企業によっては、"右手"で中国市場が喜ぶものを製造しつつ、"左手"では東南アジアなどで生産を実験的に始めているところもあります。
しかし本格的な国内回帰を阻む現実的な壁も多くあります。前出の大手企業社員はこう実情を語ります。
「日本は各種の税金も高いのですが、何と言っても問題は電気料金です。特に近年は、話にならないくらい高騰しており、国内回帰をしようとしても、コストの問題で帰れなくなってしまった企業もあります。昨年の上海ロックダウンなどで、脱中国の機運が盛り上がったこともあったのですが、こうした冷や水もあり、今は下火になってしまったようにも見えます」
チャイナリスクから日本人を守るためにも、政府はいち早く、原発を再稼働し、法人減税をするなど、環境整備に力を入れるべきです。理念的にも経済政策的にも、脱中国・国内回帰を本腰で促進する政策が急がれます。
中国駐在のビジネスマンが拘束などの憂き目に遭うリスクが高まっている。画像:Fotokon / Shutterstock.com
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